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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻2号

1992年02月発行

研究と報告

躁うつ病者の犯罪特徴—地検起訴前鑑定9年間の分析

著者: 早川直実1 影山任佐2 榎本稔2

所属機関: 1八王子医療刑務所 2東京工業大学保健管理センター

ページ範囲:P.153 - P.161

文献概要

 【抄録】1981年から1989年までの9年間の関東C地方検察庁管内におけるすべての起訴前精神鑑定例,いわゆる簡易鑑定例620例のうち,躁うつ病例20例について資料をまとめた。鑑定総数に占める割合は約3%であり,鑑定数第1位である精神分裂病132名の1割強にすぎなかった。犯行時の躁うつ病の病相分類は,躁うつ病20例中単極型躁状態に当たる者が2例(10%),双極型躁状態が6例(30%),単極型うつ状態が6例(30%),双極型うつ状態が5例(25%),双極型病間期が1例(5%)だった。躁状態は,暴力犯3例,財産犯3例,破壊犯が2例だった。うつ状態は,暴力犯7例,財産犯3例,破壊犯1例で,病間期は財産犯1例であった。発病犯行期間に関しては,精神分裂病群と躁うつ病群では差はなく,両群とも約10年強であった。躁うつ病群では,精神分裂病群より有意に女性の比率が高く,殺人の比率も有意に高かった。犯罪歴では精神分裂病群が躁うつ病群よりも有意に高かった。精神科治療歴では有意な差はなかった。躁うつ病例の中で,うつ病者では,女性による母子心中を意図した殺人が特徴的であり,躁病者では,男性による暴力犯罪(殺人を除く)の累犯が特徴的であるように思われる。なお,うつ病者犯罪の犯行時刻は,従来言われてきたように早朝に多くはなく,比較的分散されていた。内因性うつ病といえども,犯行時には家人の留守という環境的要因が重要であり,犯罪防止の点で考慮されるべきことを指摘した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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