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「日本精神病理学会第14回大会」印象記
著者: 坂本暢典1
所属機関: 1北野病院神経精神科
ページ範囲:P.226 - P.227
文献購入ページに移動 日本精神病理学会第14回大会は,山口直彦兵庫県立光風病院長の会長のもとで,1991年9月26日(木),27日(金)の2日間,神戸の兵庫県農業会館において開催された。あいにくの台風接近のため,2日間天気はぐずつき気味であったが,520名という多数の参加者に恵まれ,活発な発表・討論が行われた。一般演題は80題に上り,3つの会場に分かれ休みなく行われ,このほかにシンポジウムと特別講演が取り行われた。
中井久夫神戸大学教授による特別講演「分裂病の陥穽」では,分裂病という事態において立ち現れる「純粋性,絶対性」「恐ろしいものではあるが,ついに本当の実在に触れたという実感」などが,患者や治療者を誘惑するものであることが語られた。そして,この誘惑にとらわれないために,この「恐ろしい純粋性」に正面から向き合うのではなく,詩人が詩の言葉の裏に深い意味を託すように表面の裏に何かを忍び込ませて接近していく方法が,治療にあたって必要とされるのではないかという指摘がなされた。この講演の間,満員の会場は,先生の言葉を一言でも聞きもらすまいとするかのような,水を打ったような静けさに包まれ,その静寂の中をしみ入るように分裂病の本質をつく先生の詩的表現が広がっていくのは極めて印象的であった。
中井久夫神戸大学教授による特別講演「分裂病の陥穽」では,分裂病という事態において立ち現れる「純粋性,絶対性」「恐ろしいものではあるが,ついに本当の実在に触れたという実感」などが,患者や治療者を誘惑するものであることが語られた。そして,この誘惑にとらわれないために,この「恐ろしい純粋性」に正面から向き合うのではなく,詩人が詩の言葉の裏に深い意味を託すように表面の裏に何かを忍び込ませて接近していく方法が,治療にあたって必要とされるのではないかという指摘がなされた。この講演の間,満員の会場は,先生の言葉を一言でも聞きもらすまいとするかのような,水を打ったような静けさに包まれ,その静寂の中をしみ入るように分裂病の本質をつく先生の詩的表現が広がっていくのは極めて印象的であった。
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