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研究と報告
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【抄録】 精神分裂病患者の描画の空間表現の歪みと認知障害との関連を調べるために2つの実験(実験Ⅰ・Ⅱ)を行った。実験Ⅰでは,分裂病患者45名と正常者40名を対象に,空間的な前後関係の表現を求める2課題,二次元的図課題(円課題)と三次元的図課題(カップ課題)を与えたところ,いずれの課題においても分裂病患者では正常者より重なり(空間統合)表現の出現率が乏しかった。実験Ⅱでは,空間統合の促進条件の検討のために,分裂病患者20名と正常者30名を対象に,空間的な前後関係の表現を求める新たな三次元的図課題(四角柱課題)と描画要素の描画位置を規定する2つの二次元的図課題(分離円課題,重なり円課題)を与えた。分裂病患者における重なり表現の出現率は,実験Ⅰの二次元的図課題に比べると,実験Ⅱの三次元的図課題では増加し,二次元的図課題では減少した。このことは,分裂病患者の二次元的図における重なり表現困難を示し,患者の図と地の関係把握(認知)障害を示唆した。
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