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研究と報告
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【抄録】 10歳過ぎから強迫症状が出現し,その後感情障害や心身症をも合併するまでに至った24歳の自閉症者に家族療法を試みた結果,臨床症状に著しい改善がみられた。患者の症状の背景にある中心的精神病理として,施設入所を契機に強まった母子共生関係に基づく母子の分離不安の増強と患者のアンビバレントな心性が推測された。家族療法の中で両親間に強い情緒的対立とそれを双方が否認する態度がみられたが,両親に患者への関与を具体的な共通課題として提案することにより,両親間のコミュニケーションは急速に改善し,それに伴って患者の種々の問題行動が改善していった。最後に本症例の治療を通して自閉症に対する精神療法的接近の意義についても若干考察した。
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