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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻4号

1992年04月発行

研究と報告

挿間性に精神変調(もうろう状態)を呈したオルニチン・トランスカルバミラーゼ欠損症の思春期女子例—フェニル酢酸による治療効果の特徴

著者: 高橋祐二1 清水徹男1 三島和夫1 菱川泰夫1 高田五郎2

所属機関: 1秋田大学医学部精神科学教室 2秋田大学医学部小児科学教室

ページ範囲:P.373 - P.382

文献概要

 【抄録】肉類を全く食べないという著しい偏食を矯正されたことを契機として,挿間性の精神変調(もうろう状態)を呈するようになったオルニチン・トランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症の16歳の女子例を報告した。患者は精神発達遅滞児であり,養護学校の中学部(全寮制)に入学後,それまで長年にわたって続いていた野菜に偏った食習慣を矯正されたことを契機として,その後の約4年間にわたり,ほぼ1カ月に1回の頻度で2〜4日ほど続く挿間性のもうろう状態を呈するようになった。某医からバルプロ酸ナトリウム(VPA)1日量400mgの投与を受けたところ,ふらつき,眠気,精神的退行を思わせる幼稚な言動を反復する意識変容状態を示すようになり,同時に,著しい高アンモニア血症(308.4μg/dl)がみられた。肝生検と肝の尿素サイクル系の酵素活性の測定により,OTC欠損症と診断された。フェニル酢酸の投与開始後には,蛋白質の制限食を与えなくとも,血中アンモニア量は正常値を示し,挿間性の精神変調は現れなくなり,脳波所見と学校生活への適応度とは著しく改善した。フェニル酢酸療法の効果発現機序およびOTC欠損症における早期治療の重要性,ことに,精神発達遅滞の発生とその進行を予防することの可能性について考察を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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