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森田療法の不問技法の普遍性と特異性
著者: 長山恵一12
所属機関: 1法政大学文学部 2東京慈恵会医科大学精神科学教室
ページ範囲:P.383 - P.390
文献購入ページに移動 【抄録】 精神分析と比較した場合,森田の不問技法には次のような普遍性が存在する。①患者の在り方の歪み—病態—を一定方向に水路づけて,病態処理の舞台に振り向ける「水路づけ」「限界設定」の機能がある。②「限界設定」技法には患者の当面の関心事や要求を患者の望むような形では“取り上げない”あるいは一挙に“捨て置く”“答えない”といった不問的契機が含まれ,それは厳しい病態処理の「問い」のプロセスと表裏一体を成す。③治療者・患者間に心理的距離を生みだす働きがある。普遍性の一方で不問技法には次のような特異性がみられる。不問技法では患者の病態を病態ではないとまで言い切る,ある種の「言い換え」「すり替え」が行われる。こうした形で,「限界設定」を行うのは森田療法が強迫者たちを主な治療対象にしていること,さらには彼らの病理を1対1の治療者・患者関係ではなく,作業・集団生活の中で扱い処理する独特の病態処理戦略をとることが関係する。
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