文献詳細
紹介
ロマン主義精神医学と自己像幻視—Justinus Kernerの2つの記載をめぐって
著者: 濱中淑彦1
所属機関: 1名古屋市立大学精神医学教室
ページ範囲:P.437 - P.440
文献概要
自己像幻視の概念が精神医学に導入されたのはCh. Féré(1891)のhallucination autoscopique ouspeculaire(直訳では自己視的または鏡像的幻覚)以来のことであり,P. Sollier(autoscopie:1903)とE. Menninger-Lerchenthal(Heautoskopie,eigener Doppelgänger:1935/46),M. Mikorey(1952)の単行本,A. Leischner(1960)の総説や最近ではDamas Moraら(1980),Grotstein(1983)の報告,神経心理学においてはH. Hécaenら(1952),大橋(1965)の著作などに前後の研究史についての記載や報告(濱中1971)がある9)。
もっとも自己像幻視の現象自体の記述の歴史はさらに過去に遡り,古代ギリシャのAristotelesやWitelo(1270/78),Donato(1613)などの記載には問題が残るとしても,「魔女の槌Malleusmaleficarum」(Kramer & Sprenger 1487)の1604年版の記載(J. Nider),Charles Bonnet症状群に名を残したと同じGenèveの博物学者Ch. Bonnet(1759)が記録したLullin老人の体験,文豪Goethe(1821)の広く知られた自伝的記述があり,Wagner(1794),Schubert(1808),Nasse(1825),Müller(Doppelsehen,Selbstsehen des Doppelgängers:1826),Leuret(1834),Hagen(1835),Wigan(double:1844),Michéa(deutéroscopie:1846),Briere de Boismont(deutéroscopie:1853),Leuret & Gratiolet(vision de soi:1857),Griesinger(Selbstvision,second sight:1867),Emminghaus(Selbstvision:1878),Lasègue(1884)らが18世紀末から19世紀にかけて,この現象を記述あるいは論じている9)。
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