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研究と報告
文献概要
【抄録】 精神分裂病患者の家における感情体験を調べるために,分裂病患者37名,正常者34名に感情体験検査を実施した。この検査では,各被験者に,家の中の10場における20感情のそれぞれの体験の有無を判断させた。感情の出現率の検討から,分裂病患者は緊張の場で脱緊張,弛緩の場で緊張を体験し,感情が場にそぐわないことが示された。場に関連した感情の分化度の検討から,分裂病患者では正常者に比べ場によって感情が分化していないことが見いだされた。以上のことは,数量化Ⅲ類を使用した場と項目の全体的関連についての分析の結果,感情の未分化なためでなく,場の未分化なためであることが示唆された。したがって,分裂病患者の感情障害は,感情の体験構造の歪みにあるのではなく,感情表出のための場が分化していないことに存すると考えられた。
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