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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻7号

1992年07月発行

文献概要

展望

社会復帰の新しい流れ—究極のリハビリテーション

著者: 竹村堅次1

所属機関: 1(財)東京武蔵野病院

ページ範囲:P.682 - P.693

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■はじめに
 本誌に病院精神医学・医療を展望しつつリハビリテーションの可能性を依頼に応じて投稿,掲載18)されてから早くも10年の歳月が過ぎようとしている。それ以前に私が寄稿したのは病院におけるリハビリテーション研究の問題19)と題する論文(1978)でさらに5年さかのぼるが,その研究素材はそれ以前の少なくとも10年くらいのリハビリの経過から得たものであるから,今では全体として四半世紀以上を回顧しながら主題である社会復帰の新しい流れを論ずることになろう。
 流れという表現を実際に川の流れにたとえてみるならば,現在の社会復帰の流れは21世紀を目前にして正に大河となって海に注ぐ形を想定してもよいのではないか。その理由は以下に述べるが,まず日本における社会復帰の論議ないし活動ははじめどの辺にあったのか,その源流に触れておく必要を感ずる。日本精神神経学会が正式に社会復帰をテーマにしたのが1962年のことであるが,シンポジウムの内容は具体性を帯びてその影響を周囲に及ぼすには程遠かったと思う3)。一方,有志による病院精神医学懇話会(後の病院精神医学会さらに病院・地域精神医学会に改組)の始まりは1957年(昭和32年)と古いが,この頃の精神病院の実態は閉鎖的環境で,リハビリテーションと呼ぶことのできるような動きはほとんど全く認めることはできず,わずかに心ある人々によって院内の作業療法が細々と続けられていたにすぎない。病棟の開放率は国立公立でも15%,私立では8%程度にすぎなかった9)。この時代の国の施策は予算上措置患者を増やす方策が出ており,病院ブームに拍車をかける結果にもなり,開放療法のための経済面の施策は見込みがなかった。むしろ厚生省社会局の立案は,長期在院者の増加を見込んでのいわゆる収容型中間施設の目論見であり,これは生活保護患者の救護施設の緊急整備となって具体化した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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