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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻7号

1992年07月発行

文献概要

研究と報告

分裂病様症状を呈する慢性単純ヘルペス脳炎の1例

著者: 丸井規博1 福士正彦2 川西健登3 梶龍児3

所属機関: 1京都大学医学部精神神経科学教室 2光愛病院 3京都大学医学部神経内科学教室

ページ範囲:P.695 - P.702

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 【抄録】 これまで報告がないと思われる慢性単純ヘルペス1型(HSV-1)脳炎の1例を提示した。症例は初診時27歳,現在29歳の男性。10代後半に頻繁に口内炎に罹患,19歳時に2日間の高熱・嘔吐があった。その5カ月後,友人に髪の形を笑われたことをきっかけに家庭内に閉居し始め,母親に密着する幼児的な生活へと至り,様々な強迫行為と祖父への暴力のため我々の病院に入院した。当初,破瓜型分裂病を疑い治療を開始したが,CT,MRIにより左側頭葉優位の大脳萎縮,SPECTにて左側頭葉,島回付近の血流低下が確認され,血清・髄液でのHSV-1抗体価の異常高値が明らかになった。抗体指数の値も中枢神経系内にてHSV-1抗体が産生されていることを示しているため,本例は慢性HSV-1脳炎の診断がほぼ確定的と考えられた。本例の経験から,一見分裂病様の慢性経過,無熱性,神経症状の欠如した症例においてもウイルス脳炎を考慮する必要があることを示した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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