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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻7号

1992年07月発行

「精神医学」への手紙

Letter—“moral treatment”考

著者: 岡田靖雄1

所属機関: 1精神科医療史研究会

ページ範囲:P.723 - P.723

文献概要

 “moral”といえば,moral treatmentとmoral insanity(Prichard,1835)とが浮かぶ。この“moral”がどういう意味か。かつてわたしたちがT. P. Rees:“Back to moral treatment and community care”(1957)を訳したさい,“moral treatment”を“道徳療法”と暫定訳した(これからの精神病院シリーズ・1,松沢病院医局病院問題研究会,1959)。そののち神谷美恵子氏は“mora1”はむしろ“心理的”の意であろうと書いておられたし,わたしの『差別の論理』(勁草書房,1972)でもこの点は指摘した。吉益脩夫の“背徳症”はmoral insanityから出ているが,これは“情動狂”と訳すべき内容のものであることは武村信義『精神病質の概念』(精神医学文庫,金剛出版,1983)も詳述している。だが,“背徳症”は姿をひそめているものの,“道徳療法”あるいは“人道療法”などの訳はいまもみられる。
 この“moral”の意味をもっともはっきり述べているのはAlexander Walk:“Someaspects of the moral treatment of the insane up to 1854”(J Ment Sci 100:807,1954)で,“the word‘moral’was taken in its much broader sense of‘psychological’as opposed to physical”とはっきり述べている。Prichardの例については“many of his cases were frank manic-depressives”といっている。もともと“moral”の語はcustomを意味するラテン語のmos,morisから出ている。『研究社新英和大辞典』(第4版,1960)にも“moral”の訳として“4(物質的・肉体的でない)精神的な”とある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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