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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻7号

1992年07月発行

文献概要

研究と報告

自傷および他害などの問題行動に炭酸リチウムが有効であった重度精神遅滞の2症例

著者: 西村浩1 忽滑谷和孝1 篠崎徹1 笠原洋勇1 牛島定信2

所属機関: 1東京慈恵会医科大学柏病院精神神経科 2東京慈恵会医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.725 - P.732

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 【抄録】 気分障害を伴わず,自傷および他害などの問題行動に対しlithium carbonateが有効であった重度精神遅滞の2症例を報告するとともに若干の文献的考察を加えた。第1例では問題行動の減少,日常生活能力に対する指導上の困難さの軽減,歯科治療に伴う困難さの軽減および意味不明ながら発語の増加などの改善を認めた。これらの改善に伴って,家族側の自宅外泊に対する態度も協力的になるなど副次的効果も得られた。第2例では衝動性が軽減して他患とのトラブルがなくなり,診察にも応じるようになり医療保護入院から任意入院に切り替えることができた。また家族との外出時のトラブルもなくなったため,入院26年目に初の自宅外泊が可能となった。また日常生活能力に対する指導にも応じるようになり,簡単な挨拶などの発語も認められるようになった。我が国では精神遅滞に対しlithium carbonateを投与した報告例は少なく,不明な点が多い領域であり,その効果および作用機序などについてもまだ結論を得るに至っておらず,今後このような報告を集積してゆく必要があると考える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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