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「第14回日本生物学的精神医学会」印象記

著者: 松浦雅人1

所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.788 - P.789

 日本生物学的精神医学会第14回大会は,1992年3月26〜28日の3日間,鹿児島大学松本啓教授を会長として鹿児島市民文化ホールにおいて開催された。一般演題はすべて口演発表で171題とこれまで以上に多く,3会場で並行して発表が行われた。また,第1日目に恒例となった若手プレシンポジウムの前に,今回初めて一般演題の発表が行われた。第2日目の午後には例年と同様,特別講演とシンポジウムが行われた。今回の参加者は約500名で,本学会は発表数も参加者も年々増加の一途をたどっている。
 若手プレシンポジウムは,「精神疾患モデル」をテーマに,野村総一郎氏(立川共済病院),長友医継氏(鹿児島大)の司会で行われた。山村研一氏(熊本大)は,マウスで単離した遺伝子を授精卵に導入し,それが組み込まれたいわゆるトランスジェニックマウスについて,具体例を挙げて説明した。増井晃氏(滋賀県立精神保健センター)は,モデル動物で神経細胞移植法の現状を報告し,森本清氏(岡山大)は神経可塑性研究にキンドリングモデルが有用であることを,実験てんかんモデルを例に報告した。田島治氏(杏林大)は,強制水泳によるうつ病の動物モデルに,in vivo brain dialysisを応用することの有用性について,三国雅彦氏(国立精神・神経センター)は,躁うつ病の視床下部一下垂体—副腎皮質系機能の脱抑制モデルについて報告した。西川徹氏(国立精神・神経センター)は,フェンサイクリジン精神病が,分裂病類似の陽性症状と陰性症状を発現することから,分裂病の動物モデルと新たな治療薬の可能性について報告した。最後に指定討論として,鈴木國文氏(京都大)が精神病理学の立場から,精神疾患の動物モデルに関する疑問と限界について意見を述べた。重要なテーマであり,個々の発表は興味ある内容であったが,司会者が意図したほど討論が深まらなかった点が惜しまれる。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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