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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻8号

1992年08月発行

文献概要

特集 薬物依存の臨床

ベンゾジアゼピン系薬物依存

著者: 藤堂直之1

所属機関: 1京都大学医学部薬理学教室

ページ範囲:P.843 - P.847

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■はじめに
 ベンゾジアゼピン(BZ)系薬物は抗不安,催眠,抗けいれん,筋弛緩などの広範で優れた薬理作用と,重篤な副作用が少なく有効量と致死量との差が大きいという安全性から,現在臨床で最も広く用いられている薬物の1つである。我が国では1961年にchlordiazepoxideが,次いで64年にdiazepamが導入され,特に抗不安,睡眠導入薬としては,従来用いられてきたmeprobamate,barbiturateに比べ依存,耐性を形成しにくいとの認識もあって,1960年代末にはこれらの薬物にとって代わり,現在では約30種類ものBZ系薬物が臨床に適用されている。BZ依存については,1961年のchlordiazepoxide依存の症例8)を最初に少数の報告がなされたがこれらはいずれも治療域の数倍という大量服用者に限られ,我が国では早い段階で要指示薬に指定されたこともあり,大きな問題とはならなかった。しかし1970年代末以降海外では常用量服用者の依存症例が多数報告されるようになり1,13,29),我が国でも若干の症例報告のほか,最近ではtriazolam乱用についてのマスコミ報道もある。BZ系薬物が臨床各科で広く,そして多くは長期的に処方されている現状も併せ,その依存に対する安全性は再考の時期に来ていると思われる。以下,最近の基礎,臨床研究を中心にBZ依存について概観する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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