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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻8号

1992年08月発行

文献概要

特集 薬物依存の臨床

コカイン精神病

著者: 永野潔1

所属機関: 1関東労災病院神経科

ページ範囲:P.855 - P.859

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■はじめに
 薬物乱用は空間的には,地域的なものと広域的なもの,時間的には,一時的あるいは流行的なものと持続的あるいは通時的なものがある。コカイン乱用は今日すでに広域的であり,今後持続的,通時的なものとなることが懸念される。さて,コカイン乱用を歴史的に振り返ると,その乱用は,第1回目は1900年前後,そして第2回目は21世紀を前にした今日,つまり世紀の変わり目を境に,合わせて2回ピークがみられていることに気づく。最初の乱用の中心地はヨーロッパであり,今回は米国である。そして,今日のコカイン乱用は,粗製のフリーベースコカイン,すなわちクラック吸煙が最も代表的なスタイルである。
 コカイン中毒に関する報告も,この時期に一致してみられているが,本稿で解説が求められているコカイン精神病に関するものは,今世紀前後に比較的多くみられている。近年のコカイン乱用に関連した精神医学的研究はコカイン依存に関連したものが多いが,この間に依存性薬物に関する行動薬理学の進歩があることを考えれば当然のことであろう。しかし,クラック乱用の急速な蔓延の結果,コカイン精神病や,他の精神障害との合併に関する報告2,3)が目立ってきたことは気にかかる現象である。この乱用が21世紀まで持ち越されるか,あるいは今世紀中に解決の糸口がつかめるのかどうか,まさに現在が重要な時であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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