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特集 薬物依存の臨床
多剤乱用の病態と治療
著者: 飯塚博史1
所属機関: 1神奈川県立精神医療センターせりがや病院
ページ範囲:P.861 - P.867
文献購入ページに移動■はじめに
多剤乱用に関する問題は,我が国では未だ欧米圏諸国ほどには表面化していない。そのため一般的な認識は必ずしも高くはなく,また,それに関する報告も決して多いとは言えないのが現状である。しかし,異なった薬物を求めながら,しだいに依存が進行してゆく過程において生ずる,精神的,身体的,あるいは社会的障害の重篤さ,治療的介入の困難さ,そして何よりも,多剤乱用という現象が現代社会の中に浸透しつつあるという現状を考慮した時,決して見過ごすことのできない重要な分野であると考えられる。薬物依存症者は一般に多剤乱用の傾向を有するという指摘は数多く認められる20,27,33)が,実際のところ多剤乱用は,薬物依存のある本質的一面を象徴しているようにも見受けられる。
本稿ではまず多剤乱用の実態について,これまでの報告を紹介し,現状に関する大まかな輪郭を描いてみる。その際,特にアルコール依存症との関連,および乱用パターンの問題に焦点を当ててみたい。次に,実際に医療機関を受診した患者としての多剤乱用者について症例および統計を提示し,簡単に検討を加えてみる。最後に治療的介入,および今後の対策についても言及してみたい。
多剤乱用に関する問題は,我が国では未だ欧米圏諸国ほどには表面化していない。そのため一般的な認識は必ずしも高くはなく,また,それに関する報告も決して多いとは言えないのが現状である。しかし,異なった薬物を求めながら,しだいに依存が進行してゆく過程において生ずる,精神的,身体的,あるいは社会的障害の重篤さ,治療的介入の困難さ,そして何よりも,多剤乱用という現象が現代社会の中に浸透しつつあるという現状を考慮した時,決して見過ごすことのできない重要な分野であると考えられる。薬物依存症者は一般に多剤乱用の傾向を有するという指摘は数多く認められる20,27,33)が,実際のところ多剤乱用は,薬物依存のある本質的一面を象徴しているようにも見受けられる。
本稿ではまず多剤乱用の実態について,これまでの報告を紹介し,現状に関する大まかな輪郭を描いてみる。その際,特にアルコール依存症との関連,および乱用パターンの問題に焦点を当ててみたい。次に,実際に医療機関を受診した患者としての多剤乱用者について症例および統計を提示し,簡単に検討を加えてみる。最後に治療的介入,および今後の対策についても言及してみたい。
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