文献詳細
研究と報告
Folie à deuxとCapgras症候群とが同時に認められた1家族例
著者: 鈴木ひろ子12 柏瀬宏隆3
所属機関: 1上智大学文学研究科 2東芝林間病院精神神経科 3防衛医科大学校精神科学教室
ページ範囲:P.957 - P.964
文献概要
この姉妹(両者とも分裂病)はそれまで交互に再発を繰り返してきていたが,社会からの孤立を契機にほほ同時に再発して同じ妄想を共有し,さらに84歳の父親もその妄想に巻き込まれ,folie en familleに至っている。その経過中に姉が,父親や妹を「偽もの」と思い,妹も一時的ではあったが,姉とともに父親を「偽もの」と攻撃し,姉のCapgras症候群をも共有した。
このようにfolie à deuxとCapgras症候群が同時に現れた症例は,欧米でも3例が報告されているにすぎず,我が国では未だ報告がない。
本症例の成立機制や,folie à deuxとCapgras症候群との同時出現に関しては,その背景に複雑な家族力動があると考えられた。
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