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短報
向精神薬投与により発症したpalatal myoclonusの1例
著者: 堀孝文1 石井映美1 熊谷一弥1 田所稔1 茂呂和生1 矢野和之1 香取郁雄1 小泉準三2
所属機関: 1石崎病院 2筑波大学臨床医学系(精神医学)
ページ範囲:P.1013 - P.1016
文献購入ページに移動myoclonusは筋束の一部または全部に急激で短時間筋収縮が起こる不随意運動の一種である。このうち軟口蓋に限局してみられるものをpalatal myoclonusといい,1886年Spencer14)によって最初に記載されて以来多数の症例報告がなされてきた。palatal myoclonusは毎分120〜140回程度の規則的かつ持続的な不随意運動であり,軟口蓋のみならず咽頭,喉頭,横隔膜などの鰓弓由来筋にもしばしば広がる1,7)。その責任病巣はmyoclonusと同側の小脳歯状核,対側の赤核,下オリーブ核などを結ぶGuillain-Mollaretの三角と呼ばれる領域が重要であると考えられている4)。palatal myoclonus発症の原因疾患となるもので最も多いのは脳血管障害であり1,7),その他脳腫瘍14),多発硬化5),脳炎5),頭部外傷6)などの脳疾患でも認められているが薬物の投与により発症したとするものは現在まで報告がない。我々は今回,精神分裂病の患者で向精神薬による治療中palatal myoclonusを呈し,薬物の中断や再開とpalatal myoclonusの発症との間に因果関係を認めた1臨床例を経験したので報告する。
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