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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻11号

1993年11月発行

文献概要

資料

InSkaと志向性理論

著者: 金吉晴1 角田京子2 藤縄昭1

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所 2Heidelberg大学精神科

ページ範囲:P.1231 - P.1236

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■はじめに
 志向性尺度Intentionalitäts-Skala(InSka)4)は,精神分裂病におけるアパシーApathieの中心概念と考えられた志向性Intentionalitätの障害の測定のために,Heidelberg大学のChristoph Mundtが作成した評価尺度である。周知のようにMundtは1989年よりJanzarikの後任としてHeidelberg大学精神科の主任教授の地位にあり,同学派の精神病理学の伝統を受け継ぐ一方で,数理統計的な手法をも取り入れた研究を行っている。近年の精神医学においては操作的-経験的方法と理念的-解釈的方法との相違が浮き彫りになっているが,その中でとりわけ注目されるのが,ドイツ精神病理学の牙城であったHeidelberg大学の動向であろう。Mundtはその期待に応えるかのように,教授就任講演10)において両者を架橋する研究への意欲を見せており,その具体的な現れがInSkaであると考えられる。
 InSkaは1985年に初めて考想されたが,その最終版が決定されたのはMundtの教授就任以降である。筆者らはかねてよりこれに興味を抱いていたが,最近になって直接Mundt教授と対話,文通する機会に恵まれ,InSkaの日本語訳への快諾を得た。尺度ということに興味のない方でも,個々の項目を参照することによって,現象学的素養を持った精神病理学がどのような臨床現象を重視しているのかを知ることができると思う。なお翻訳に当たっては,日本語訳からのドイツ語への反訳を行い,それをMundt自身が原文と照合するという手続きをとった。以下にInSkaとともに,その基礎となるMundtの理論的な立場を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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