icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻12号

1993年12月発行

展望

行動療法とはなにか

著者: 山上敏子1

所属機関: 1国立肥前療養所臨床研究部

ページ範囲:P.1252 - P.1263

文献概要

■行動療法は方法の体系である
 もともと行動療法とはなにかということを,心理療法らしく生き生きとわかりやすく端的に定義することは難しいことであった。1959年に,初めて統一した治療概念としての行動療法という名称が提案されたが,その時の行動療法の概念は,現代の学習理論に基づく実験によって基礎づけられたすべての行動変容法21),であった。この概念を,例えば精神分析療法や森田療法などの,他の心理療法が持っている概念と比べると趣が全く異なっていることがわかる。この趣の違いは,行動療法の誕生を他の精神療法の誕生と比較してみることでさらによく理解できる。
 ほかのところですでに説明84)しているところではあるが,精神分析療法にしても森田療法にしても,これらの心理療法は,ある時代に,ある場所に生きた,一人の抜きんでた洞察力を持った臨床家の経験と思索を通した人間観や,人間モデルや,理想的な人間像がもとになって誕生した治療法であり,しかも初めから完成された理論と完成度が高い形を持っていたのである。したがってこれらの治療法の概略はまとまりのある姿として描きやすく理解しやすい。一方,行動療法は,異なる時代に,複数の場所で,複数の研究者によって行われていた,「行動」の出現や変化や維持に関する実験的な研究や観察から導きだされた理論や法則や,また研究や観察の方法が,臨床に応用されて心理的な治療法としての形を持つようになったいくつもの治療方法が,ある時,行動療法という名前のもとに集められて誕生した治療法である。ここには,思索的な人間観がもとになっているのではなく,いろいろな人間「行動」の理解と変容に向けた方法という,心理療法としての方向が明らかにみえる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら