icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻12号

1993年12月発行

研究と報告

分裂病と誤診されていた慢性脳炎の1例—持続性髄液細胞増多を示す慢性脳炎

著者: 丸井規博1 深尾憲二朗1 岡江晃1 扇谷明1 水谷江太郎2 川西健登2 吉岡隆一3

所属機関: 1京都大学医学部精神神経科学教室 2京都大学医学部神経内科学教室 3大津赤十字病院

ページ範囲:P.1279 - P.1286

文献概要

 【抄録】 症例は27歳,男性。16歳時に幻覚妄想状態にて発症,激しい興奮・自傷行為があるためほとんど入院にて経過していた。約10年間,精神分裂病の診断は変更されていなかったが,頭部CTにて顕著な大脳萎縮に気づかれたことをきっかけに脳器質疾患の検索が開始され,持続性髄液細胞増多が確認されたため慢性脳炎と診断が改められた。髄液培養により一般細菌,真菌,結核菌による脳炎は否定され,抗体検査からトキソプラズマ,梅毒,ボレリア脳炎も否定された。髄液ウイルス抗体価はELISA法にて数種のウイルスにつき陽性であるが,起因ウイルスは確定できていない。精神病理学的には分裂病と鑑別することは困難であり,回顧的には本例の生来性難聴に注目する以外には鑑別診断の端緒がなかったと思われる症例である。文献的にも検討し,本例は胎内感染・思春期不顕性発症の慢性ウイルス脳炎ではないかと推定した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら