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長期経過からみた中間領域の位置づけ—内因性精神病の経過力動に関する研究3
著者: 岩井一正1 石原さかえ1
所属機関: 1東京女子医科大学神経精神科
ページ範囲:P.1311 - P.1318
文献購入ページに移動 【抄録】 二分法のはざまに当たる中間領域に,孤立した1単位を求めず,分裂病症状と感情病症状の重畳関係に基づいて複数の類型を定義し,個々のエピソードを類型評価する方法で長期経過を検討した。対象は独自の経過研究の母対象74例のうち二分法におさまらない経過をとった29例である。感情病と分裂病の間にスペクトル化された5つの類型は,平均約17年の個々の経過の中で,頻回な類型交代を示した。また変遷の方向には,類型ごとに相違がみられた。初回観察の類型から長期的な病像の行方を予測するならば,中間領域の内部に,二分法的切れ目がつけられる。すなわちDSM-Ⅲ-Rになぞらえれば,精神病像を伴う気分障害と分裂感情病障害の間である。しかし経過途中の類型交代を考慮すると,個別類型に寄せられる予後指標の信頼性は相対化される。中間領域では,類型を定型的に眺めるよりも,形態の可変性に注目することが重要である。
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