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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻2号

1993年02月発行

文献概要

特集 加齢に関する精神医学的な問題

睡眠と体温リズム

著者: 坂本哲郎1 中沢洋一1 内村直尚1 土山祐一郎1

所属機関: 1久留米大学精神神経科教室

ページ範囲:P.145 - P.152

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■はじめに
 年齢により睡眠は質的にも量的にも大きく変化する。新生児は一日の3分の2は眠って過ごし,そのうち半分はレム睡眠によって占められるが,幼児期から小児期にかけてレム睡眠は著明に減少する。また,新生児は多相性の睡眠を示すが,徐々に一相性となり思春期から青年期になると睡眠は夜間に集中し総睡眠時間も6時間から8時間と一定してくる。その後,50歳を過ぎる頃から夜間の中途覚醒が漸増し,睡眠時間は減少傾向を示す。老年期の夜間睡眠の特徴は徐波睡眠,特に段階4の著明な減少,段階1の増加,中途覚醒の増加,全睡眠時間と睡眠率の減少,レム睡眠の減少とレム潜時(入眠から最初のレム睡眠が出現するまでの時間)の短縮などである。一方,高齢者では時に昼寝をするようになり,一日の睡眠経過は不規則な多相性睡眠の兆候を示し,一日の総睡眠時間はかえって増加する傾向を認める。
 さて,この地球に存在するほとんどすべての生物は動植物を問わず固有のリズムを有することにより環境に適応している。ヒトにおいても様々な生体現象がサーカディアン・リズムを基本として変動するが,こうした生体リズムもまた加齢とともに変化する。一方,近年の時間生物学の発展により睡眠と深部体温リズムとの間には密接な関係があることが明らかにされてきた。
 本特集では高齢者における睡眠や睡眠・覚醒リズム,深部体温リズムの変化について検討するとともに,睡眠と体温リズムの関係や睡眠,特に徐波睡眠の機能的意義を通して高齢者にみられる睡眠の変化の機序についても考察を加える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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