研究と報告
炭塵爆発により集団発生した一酸化炭素中毒患者の15〜17年後の状態—入院患者について
著者:
立津政順1
三村孝一2
所属機関:
1熊本大学
2城ケ崎病院
ページ範囲:P.159 - P.167
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【抄録】 1963年の三池鉱爆発により発生した839人のCO中毒患者のうち,1979年3月から翌年10月まで,後遺症のため入院中の全患者67人の実態を明らかにする目的で調査がなされた。それによると,知的機能障害65例(記銘59,記憶障害45などからなる),健忘症状群43,神経心理学的症状36,神経症状60,情意障害67(欲動減退64,感情鈍化61など)などがみられた。症度は高度26,中度27,軽度14で前二者が著しく多い。無力—弛緩状,うつ状態,訴えに積極性を伴う自覚症状は,B労組の者に少なく,A労組の者に多い(p<0.05)。会社との間で前者は協調・優遇,後者は対立・冷遇の関係にある。うつ状態と神経症状態,無力—弛緩状との関係は密で相伴って現れる傾向が大(p<0.05)。分裂病状態は,障害の最高度例,CT像で著明な前頭葉障害例に多い(p<0.01)。後遺症の基本は,知的機能障害,欲動減退,感情鈍化からなる。在宅患者に比べ入院患者では,初期昏睡時間が12,特に24時間より長い例が多い(p<0.001)。