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研究と報告
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【抄録】 うつ病を発症した女性一卵性双生児の不一致症例について,その生育史と病前性格の形成,また両者の結婚後の家族状況を中心に報告した。本症例では双生児両者の生育史と病前性格が類似していたため,うつ病不一致の要因は二人の生活環境の違いが顕著となった結婚後の家族状況に求められた。二人の結婚後の家族状況の比較検討から,発病を免れた相手方(A)の家族状況の特徴として,①強力な庇護者の存在,②良好な夫婦関係が保たれていたこと,③変化の少ない生活環境が得られていたことが明らかになった。これらの点がAのうつ病発症について抑止的に働いた可能性について,うつ病の家族研究やEE研究を踏まえながら考察を加えた。また,Aが発病を免れた状況はBの治療モデルとして有用であり,ひいてはメランコリー型性格者が安定する状況であると考えられることを指摘した。
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