文献詳細
研究と報告
文献概要
【抄録】 1総合病院の手首自傷を伴った症例56名(男性22名,女性34名)を検討した。疾患分類はDSM-Ⅲ-Rに従った。患者は1978年以後増加し,平均年齢は34歳(13〜77歳)で,約半数を占める30歳未満の症例では女性の適応障害が多いが,20代では分裂感情病と気分障害がこれに次ぎ,30歳以上では男性の気分障害と女性の分裂感情障害,短期反応精神病が中心で,30歳未満の症例よりも自殺の危険度は高いと思われる。症例の29%に境界性人格障害が,約半数の治療中または既往歴に服毒,身体自傷,縊首,投身などの自殺行動がみられた。対象の41%は未婚で,27%に自殺,精神病,アルコール症その他の精神疾患の負因があり,素因の関与も考えられる。また,手首自傷は自責,怒り,受容への願いなどの感情の非言語的表現であり,一種の身体言語ともいえる。半数は依頼症例で,手首自傷などの病態は今後総合病院精神科が対応すべきテーマの1つといえる。
掲載誌情報