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研究と報告
分裂病シュープ時に大麻性フラッシュバックが長年にわたり再現された1例
著者: 武者盛宏1 後藤裕1
所属機関: 1東北大学医学部附属病院神経科精神科
ページ範囲:P.289 - P.297
文献購入ページに移動 【抄録】 本例は分裂病発病初期に病的動機から大麻吸引を行ってHorror-trip(HT)を体験し,その1週間後にFlashback(Fb)が起こり,以後15年間にわたり急性増悪時にHTがFbされた例である。初回のFbによりそれまで認められていなかった作為体験,幻聴,思考障害などの症状が誘発された。13回の急性増悪時の病像,症状の布置は驚くほど類似していてFbの広義の定義をも十分に満たすものであったが,さらに病像について大麻性症状と分裂病性症状とを精神病理学的にできるかぎり鑑別することを試みた。大麻性体験と内因性病像を加重と融合の観点から分析し,かなりの部分が分離可能であった。大麻性Fb症状としてのHT,常同運動,強迫表情,感情障害,幻視,身体幻覚などの特徴を明らかにし,さらに中毒性視覚症状と分裂病症状との融合症状として考想化視現象に注目した。病初期の大麻吸引の危険性を指摘し,Fbが長期化した要因などを考察した。
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