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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻3号

1993年03月発行

文献概要

短報

trazodone投与中に悪夢を生じたうつ病の2例

著者: 寺尾岳1

所属機関: 1産業医科大学精神医学

ページ範囲:P.315 - P.317

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 trazodone(レスリン,デジレル®)は,1991年秋に本邦へ導入された抗うつ薬である。抗コリン作用が少ないことから,四環系抗うつ薬と同様に,緑内障や前立腺肥大などの合併症を有する患者や,老年期および外来患者へ投与しやすい抗うつ薬と考えられている。また,trazodoneはamitriptylineやdoxepineに似た鎮静作用を有する6)ことから,米国においては催眠剤としての検討も行われている4,5)
 一方,いまだ本邦へは導入されていないものの,trazodoneと類似の作用を示す抗うつ薬にfluoxetineがある。両者とも,神経終末におけるモノアミン再取込み阻害作用がnoradrenaline神経系に対してはほとんど働かず,もっぱらserotonin神経系に対して働くという特徴を有している。最近,米国でfluoxetine投与中に鮮明な夢を見たとする4症例が報告された2)。したがって,作用機序に共通点のあるtrazodoneにおいても夢に変化を生じる可能性があると考えられる。もしtrazodone投与により夢の変化,とりわけ悪夢が生じうるのであれば,trazodoneをそのまま継続投与した場合,悪夢が持続し,その結果精神症状が増悪するかもしれない。したがって,trazodoneと悪夢の関係に注目することは重要である。しかしながら,筆者の知るかぎりでは今までに,trazodoneの離脱時に悪夢を見たとする報告3)はあっても,その投与中に悪夢を見たとする報告はなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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