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特集 現代日本の社会精神病理
犯罪・非行の社会精神病理—少年非行の動向と少年の社会意識の特徴にみる我が国社会の病理
著者: 山上皓1 石井利文1 野田美和1
所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学研究部門(犯罪精神医学)
ページ範囲:P.365 - P.371
文献購入ページに移動少年非行の動向は,成人の犯罪の場合以上に,より一層敏速かつ明瞭に社会内の変動やそこに生じた葛藤を反映する。社会内に適応的な生活を阻害するような要因が生じた時には,判断力や抑制力に欠けるところのある未熟な少年達が非行への誘惑に駆られ,その上,少年達の被影響性や模倣性の強さが,同種の非行を一種の流行現象のように多発させる傾向があるからである。
我が国の少年非行は,戦後3度にわたる波状的な増大期を経て,近年は緩やかな減少傾向を示しており,昨年1年間に警察に検挙された犯罪少年の総数も,人口比でみると第3の波のピーク時(1981年)の70%程度に減じているが,各種統計は,この領域になお深刻な問題が潜在していることをうかがわせる。
本稿では,我が国の少年非行の動向を概観し,近年の非行の特徴を示した上で,その背景について,総理府によって行われている少年の各種意識調査結果等を用いて考察を加えたい。なおここでは,少年犯罪者の中に原則として14歳未満で刑法に触れる行為をしたいわゆる触法少年をも含め,その母数については犯罪統計書に倣い10〜14歳の少年人口をとった。
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