文献詳細
展望
文献概要
■はじめに
近年,精神医学の領域に侵襲性の低い神経画像診断法が続々と導入され,精神分裂病(以下,分裂病)の生物学的研究にも盛んに利用されている。画像診断は,ヒト脳の生体における形態学的・機能的情報を比較的非侵襲的に得ることを可能にした。死後脳を用いた場合は,脳を直接観察し,詳細に検索することができるが,動的に変遷する分裂病の病態のうちの何が死後脳における所見と関連するのかは決定し難い。また非特異的な死後変化,加齢や生前の服薬の影響などの要因を除外しえないことが多い。画像診断では,検査時期を自由に選択し,多数例について検討できるので,ある面では死後脳より豊富な情報が得られる。しかし一方で,画像診断は,脳自体ではなく,種々の技術的制約の中で得られる間接的情報を見ているものにすぎないので,常にその限界をわきまえる必要がある。特に分裂病では,一般の器質性脳疾患とは異なり,より軽微な形態学的・機能的変化が問題とされるので,評価には細心の注意が要求される。
神経画像診断法を用いた分裂病の研究報告は非常に多い。ここでは,形態学的画像診断と機能的画像診断とに分けて,分裂病における画像診断研究の概要を振り返り,それにより次第に明らかになりつつある分裂病の生物学的病態について述べてみたい。
近年,精神医学の領域に侵襲性の低い神経画像診断法が続々と導入され,精神分裂病(以下,分裂病)の生物学的研究にも盛んに利用されている。画像診断は,ヒト脳の生体における形態学的・機能的情報を比較的非侵襲的に得ることを可能にした。死後脳を用いた場合は,脳を直接観察し,詳細に検索することができるが,動的に変遷する分裂病の病態のうちの何が死後脳における所見と関連するのかは決定し難い。また非特異的な死後変化,加齢や生前の服薬の影響などの要因を除外しえないことが多い。画像診断では,検査時期を自由に選択し,多数例について検討できるので,ある面では死後脳より豊富な情報が得られる。しかし一方で,画像診断は,脳自体ではなく,種々の技術的制約の中で得られる間接的情報を見ているものにすぎないので,常にその限界をわきまえる必要がある。特に分裂病では,一般の器質性脳疾患とは異なり,より軽微な形態学的・機能的変化が問題とされるので,評価には細心の注意が要求される。
神経画像診断法を用いた分裂病の研究報告は非常に多い。ここでは,形態学的画像診断と機能的画像診断とに分けて,分裂病における画像診断研究の概要を振り返り,それにより次第に明らかになりつつある分裂病の生物学的病態について述べてみたい。
掲載誌情報