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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻6号

1993年06月発行

展望

心気症—近年の精神医学疾病誌にみられる病像

著者: 高橋徹1

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部

ページ範囲:P.580 - P.587

文献概要

 心気症は,今日ではそれぞれの診療科において対象となるどの疾患とも鑑別され除外されるものとして診断されているので,せいぜい「不定愁訴」49)とか「自律神経失調症」などの暫定的な病名のもとで治療的関与がなされているが,患者の数は決して少なくない2,14)。実際「心気症」とか「心気的」という用語は医療従事者の間で頻繁に使われている。心気症の扱いはどの診療科にとっても職業上の心得という点でも重要な課題である10,12,32,36,39,44)
 ただ精神科は,他の診療科とは違って心気症をその治療の主要な対象に含めている。ところが,当の精神科の教科書の類いをみると,心気症に関する叙述は意外なほど乏しい。吉松55)も誌している。「心気症の歴史は20世紀近い年月を経ており,メランコリーやマニーおよびヒステリーとともに,精神医学の一大テーマであった。これと比し,現代精神医学の最大のテーマである精神分裂病の概念はいまだ一世紀も経ていない。このことは心気症を考える時に感慨深いものがある。」と。心気症は,今日ではその言葉のみは残されているが精神医学的重要性はまるで失われてしまっているかのようにみえる。しかしそうとばかりは言えず,我が国でも精神医学雑誌には何回か心気症の特集が組まれている。小論では比較的近年著された内外の心気症関連の論著に基づいていくつかのトピックスを挙げ,現代の心気症問題の重要性と広がりの一端を示してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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