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研究と報告
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【抄録】 死別による悲嘆反応は,精神科外来で診ることは稀だといわれているが,昨今の総合病院外来には,そのようなケースも少数ながら訪れる。6年6カ月の自験例(女10例,男4例)について考察した。まず,正常悲嘆反応と病的悲嘆反応の区別,悲嘆反応の位置づけを試みた。次に症例の検討から,死別に対する脆弱性を準備する要因として,①女性,②中年期,③不慮の死を挙げた。性格的には依存性が特徴的である。それが素直な受療態度や治療者への心理的依存に結びつきやすい。彼らは愛する対象と死別し,その精神的支柱を失い,危機的状況に陥るが,それに対する防衛として,Kohutや笠原のいう否認の機制による縦割り型のsplittingを作動させ,自己と死者のpositiveなイメージを守ろうとする。それは死者との強い一体感として表明される。経過は一般的に良好だが,なかには,治療が長期化したり,再受診したりするケースもある。
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