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対人恐怖における加害意識と被害意識について
著者: 田中健滋1
所属機関: 1亀田病院
ページ範囲:P.597 - P.604
文献購入ページに移動 【抄録】 対人恐怖における加害意識と被害意識について,行動生活空間論的に検討した。程度の多少はあれ両意識はおおむね同伴するものと考えられたが,B(社会生活空間)ゾーンのうちB-s(社会距離)ゾーンでは多く加害意識優位であるのに対し,B-p(公衆距離)ゾーンでは被害意識優位の傾向が認められた。これは,日本社会の特異的条件として,A(私的生活空間)ゾーンでの対人倫理「他者配慮的原理」がB-sゾーンまで浸透していることの反映と考えられた。また,B-pゾーンではBゾーン本来の自己主張的権利・契約の論理が作用して,被害意識優位の傾向を結果するものと考えられた。これは同時に,中年期の対人恐怖,「軽度」対人恐怖,メランコリー親和性格者の「対人過敏」などにおける,被害意識優位の所見も説明するものと考えられた。疾病論的には,対人恐怖は敏感状態の1特殊型と位置づけるのが妥当と思われた。
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