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【抄録】 産業精神医学の現場で筆者らが経験した欠勤ケースのうちから,明確な精神障害によるもの,能力や人格の偏りによると考えられるものを除いた12例を取り上げた。このうち月に1ないし2回,数日ずつの欠勤を数年にわたり繰り返す事例が8例みられた。これら短期反復型のケースは精神医学的には笠原のいう退却反応のうち,感情病の極に近く位置すると考えられる。これまでの適応のよいこと,短期間のみの過眠と抑制を主病像とし明確な抑うつ気分を伴わないこと,欠勤に対する否認的無関心の態度をとりがちなことなどの共通した特徴が示された。残りの4例も同じく退却傾向を示したが,欠勤がより中・長期的でアイデンティティ障害の特徴を示し,感情病より神経症の傾向の強いものであった。短期反復型の頻回欠勤の治療では休養と睡眠覚醒リズムの再建を目標とし,合わせて退却的心理機制の駆動に深く関係する強迫性の緩和をめざす精神療法が必要であった。
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