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研究と報告
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【抄録】 症候学的にはうつ状態のみを呈しているが,基礎性格はマニー型性格と考えられた6症例を呈示し,マニー型性格の病理を考察することにより,マニー型性格者にうつ状態が生起する構造を論じた。これらの症例はいずれも,高度の活動性,社会適応を示しながら壮年期よりうつ状態を呈し,遷延化していたが,絶えざる自立的活動の希求,権威からの圧迫への反逆などに,マニー型性格の特徴が見いだされた。次いで,マニー型性格の病理を,患者と社会規範的なものとの間の関係性についての考察から,自己の自立性の確保が持続的な熱中的活動投企の中に膠着している構造として論じ,うつ状態の生起を,活動による自己達成の背後に,非活動,停滞に伴う自己喪失が出現するという観点から考察した。さらに経過についての分析から,遷延化の様態の理解と治療においても,基礎性格の構造についての把握が不可欠であることに言及した。
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