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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻8号

1993年08月発行

文献概要

研究と報告

自閉症における「知覚変容現象」の現象学的研究

著者: 小林隆児1

所属機関: 1大分大学教育学部

ページ範囲:P.804 - P.811

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 【抄録】 自閉症にみられる「知覚変容現象」の概念を提起した。この現象は幼児期および思春期に少なからず認められ,自閉症児にとって環境世界がそれまでとは異なった様相で知覚されていることを推測させる行動が出現した事態を指す。知覚の様相により以下の3つに大別した。①「視覚変容現象」は,あたかも今まで見たことがないかのように対象を凝視したり斜め見するなどの行動によって表現されることが多く,②「聴覚変容現象」では特定の声や音に極度な苦痛を訴えたり,自分のことが話題になると敏感に反応し,③「状況変容現象」は聴覚変容現象から進展することが多いが,状況に対する強い戸惑いを示し,被害関係念慮を思わせる病態へ発展するなどの諸特徴が認められる。この概念提起は自閉症の発症ないし種々の症状発現機序をより現象学的に把握することを意図し,彼らの精神内界を理解する契機となりうるとともに,分裂病との異同をめぐる議論に対して両者の関連性を再度追求してゆくための一つの試論として有用であることを主張した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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