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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻8号

1993年08月発行

文献概要

シンポジウム 精神障害者の権利と能力—精神医学的倫理のジレンマ

強制治療に対する拒否・同意とその能力

著者: 仙波恒雄1

所属機関: 1医療法人同和会千葉病院

ページ範囲:P.861 - P.866

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■はじめに
 今日患者の権利擁護の運動が高まる中で,精神科領域において,治療拒否の問題は臨床上論議の多い課題のひとつである。
 特に同意能力が問題となる患者で,強制入院となっている者の対応が問題である。
 一般に治療者が患者の最大の利益と考えても,一方的に治療者の判断で医療を行うことは問題がある。両者の間の信頼関係の中で,インフォームド・コンセントが行われて,目的とする医療が行われることが望ましい。しかし,ある程度強制的に治療者が治療を推し進めなければ,治療目的が得られなくなるという医療者側のジレンマがある。
 そこで論議の焦点は,インフォームド・コンセントを前提として,患者に同意能力がある場合と同意能力に問題のある場合に分けて,同意を得られない場合にどのように対応するか,もし後者の場合,患者の同意能力に問題がある場合,誰の代理同意で,どのような条件でならば,治療を行いうるか,また実施する医療行為の種類,内容はどのようなものか,その効果,副作用などについてどのようなところまで説明すればよいのかなど整理しておかなければならない。現実に起こりうる症例を中心に検討が必要である。治療拒否の課題はインフォームド・コンセントの法的手続きDue Processの結果として起こる。インフォームド・コンセントの実施がいまだ十分でない日本では,今後の問題でもある。
 また精神病院内では入院者の処遇,なかんずく基本的人権が日常どれだけ保障されているか,できるだけ制限の少ない治療環境で,治療を受けているか,治療者と患者の信頼関係などによって,治療拒否の表現のあり方が異なった形をとるであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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