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雑誌目次

雑誌文献

精神医学35巻9号

1993年09月発行

雑誌目次

巻頭言

ヤラセの効用

著者: 西丸四方

ページ範囲:P.914 - P.915

 クレペリンの「精神医学」8版の3巻の内因性鈍化の章の緊張病の写真(原本;708頁154図,訳本;精神分裂病,42頁3図)に分裂病の病人たちの群として,カタレプシー,蝋屈の6人の患者の妙な姿態の写真が載っている。この写真は1896年の5版にも1頁大で出ているのでクレペリンのお気に入りの写真なのであろう。6人の病人の左端の人は直立して右手で頭頂を抑えており,次の人は腰かけて左足を右膝に乗せ,その下に左腕を差し込み,左膝を右拳で抑えて窮屈そうな格好をしており,次の人は後に立って右手で挙手の礼をし左肘を折って手を肩に乗せ,もう一人は後に立って左向きで左手に二足のスリッパを持って掲げており,その次の人は横向きに椅子に腰かけて顔は正面に向けて笑っており,最後の一人は立ってうなだれて左手をズボンのポケットに入れている。緊張型の病人の一人にカタレプシーの姿勢を2,3分とらせておけないことはないが,6人も並んでこんなことができるものであろうか。100年も前にはこのような病人が多く居たのであろうか。私は精神医になって50何年間10人と見たことはない。
 ところが1960年のオランダのファンデンベルフの小さな精神医学入門には80も挿絵があってクレペリンのこの写真も転載しているが,「この写真の病人には全部が全部カタレプシーや蝋屈があるのか疑わしい」としてある。すなわちヤラセであって,こんな症状のない病人ないし健康人が医者から命ぜられてサセラレタ,芝居をサセラレタところの写真ではないかというのである。クレペリンのような大先生でもヤラセをしないと教育に役立っ典型的な姿態の写真はとれないものかと感心した。私も昔は安物のコダックのヴェス単(ヴェストポケット単玉F11)かガラス乾板用の写真機でストロボなどなく,マグネシウムの粉を燃やす危なっかしい閃光器か,煌々と電球で照らせる室内か,日当たりのよい屋外でしか撮影できなかったが,こんなお膳立をした場所へ病人を連れてくると,特異な表情,姿態が消えてしまうのである。病人も写真をとられるとなると身構えをしてしまうから,何の気なしに隠し撮りをしなければだめなのである。

展望

抗うつ薬—現状と課題

著者: 上島国利

ページ範囲:P.916 - P.928

■はじめに
 うつ病治療の多次元的アプローチのうち抗うつ薬による薬物療法は,各種治療法の中では,治療効果も高く,安全であり,簡便に施行できることから多くの臨床家により,今日のうつ病治療の中心として位置づけられている。
 現代の抗うつ薬開発の動向は,従来の抗うつ薬に類似し,それらの長所を高め,短所を是正した,より洗練されたものの開発と,従来とは全く違った発想のもとに開発されつつある物質と,2つの方向性を持っている。また新しい抗うつ薬の中には,単にうつ病のみでなく,多様な適応を持つものも誕生しつつある。将来は,抗うつ薬という名称は不適切となり,“amine uptake inhibitors”や“amine receptor regulators”が使われるかもしれない5)
 抗うつ薬の開発は常にうつ病病態生理の解明に密接に関連しつつ進歩しており,その奏効機序の解明が,うつ病の本態の解明に寄与している。一方,うつ病の病態生理が明らかになるに従い,それらの機能障害の是正を目指し抗うつ薬の開発も活発に行われることになる。また抗うつ薬の進歩発展にDSM-Ⅲ,DSM-Ⅲ-Rなどの操作的診断基準の果たした役割も忘れてはならない。信頼できる科学的診断がなされると,抗うつ薬の効果がより明確となるからである。

研究と報告

情動発作を呈した47例のてんかん患者の臨床的検討—ことに不安発作の検討を中心として

著者: 兼本浩祐 ,   馬屋原健

ページ範囲:P.929 - P.933

 【抄録】 本院にてんかんを主訴として来院し,単純部分発作を示した563人の患者から情動発作を呈した47人の患者を対象として選択した。情動の内訳は,不安・恐怖が41人,不快感が8人,抑うつ・寂寥感が4人,快感が2人であった。不安発作の内容を検討すると,実体的意識性を中心とした妄想気分様の状態が相当の頻度で認められた。不安発作を呈した患者を,追想体験を訴えた患者を対照群として比較したところ,不安発作を示す患者は有意に発症年齢が低かった。これらの結果から,情動発作が,原始的・蒼古的な情動の再現である可能性を論ずるとともに,情動と追想の密接なかかわりを示唆した。

側頭葉てんかん患者のMRIによる脳の形態変化に関する定量的検討

著者: 先崎章 ,   大久保善朗 ,   阿部哲夫 ,   松浦雅人 ,   森岩基 ,   浅井邦彦 ,   融道男

ページ範囲:P.935 - P.941

 【抄録】 CTおよびMRIにおいて視察的に明らかな異常を認めない側頭葉てんかん患者30名と正常対照者20名とを比較し,側頭葉てんかん患者における側頭葉内側部を中心とする脳の変化について定量的に検討した。
 ①てんかん群では正常対照群に比較して側頭葉内側部が有意に小さく,同部位のT1値が有意に高く,海馬・扁桃体を中心とする部位の萎縮,水分含有量の増加が示唆された。②てんかん群の側頭葉内側部の大きさの左右差は,正常対照群での左右差と比較して有意差はなく,てんかん群では同部位が両側性に変化している可能性が示唆された。③幻覚妄想を呈した群(9例)では,第3脳室の断面積が有意に大きかった。これは幻覚妄想群では,第3脳室周囲の構造物に変化がある可能性を示す結果と考えられた。

てんかん患者の結婚・就労状況

著者: 久郷敏明 ,   福間満美 ,   三野進 ,   高城健司 ,   赤田幸平 ,   松下正之 ,   洲脇寛 ,   細川清

ページ範囲:P.943 - P.950

 【抄録】 香川県内に在住する20〜59歳の成人てんかん患者147例を対象に,初診時の結婚・就労状況,相互間の関連,およびそれらに対する各種臨床要因の影響を検討し,以下の結果を得た。なお,カッコ内は,精神遅滞を合併する27例を除いた数値である。結婚状況では,61%(53%)が未婚であった。性別による顕著な差はなかったが,特に男性の晩婚傾向が著明であった。臨床要因では,早期の発病が低い既婚率と関連していた。男性患者の66%(77%)が定職を有していた。そのうちの約50%が,熟練労働に従事していた。就労状況は,精神遅滞を除外すれば,性格障害,神経症様症状,精神病様状態などの持続的精神症状および学歴の低さが阻害要因であった。発作頻度は,結婚・就労のいずれについても,著しい影響は示さなかった。以上の結果に若干の考察を加え,包括的視点からのてんかん治療の必要性を指摘した。

月経周期に関連したspike wave stupor

著者: 横山尚洋 ,   上原隆夫 ,   原純夫 ,   原常勝

ページ範囲:P.951 - P.957

 【抄録】 2例の月経周期に関連して出現するspike wave stupor(SWS)を報告した。第1例は39歳女性で27歳時に妊娠中絶手術後にもうろう状態および強直間代発作を呈するようになった症例で月経前に周期的にSWSが出現した。ダナゾールによる偽閉経療法を試みたが有効ではなかった。脳波では全般性多棘徐波複合を示し焦点性異常はみられなかった。第2例は37歳女性で20歳時に向反発作と二次性全般化発作が初発した。26歳頃より発作が増加し28歳頃より月経の前後にSWSを呈するようになった。脳波では右前頭側頭部に棘波焦点を認めたが極期には全般性棘徐波複合を示した。2例ともにバルプロ酸が症状の軽減に有効であったがspike wave stuporの周期性発現を抑えることは困難であった。文献例を合わせこれらの症例の臨床的特徴につき考察を加えた。

非痴呆者大脳皮質のアミロイドβタンパクの検討—軽度アルツハイマー型老年痴呆との比較

著者: 池田研二 ,   羽賀千恵 ,   藤嶋敏一 ,   加瀬光一 ,   水谷喜彦 ,   小阪憲司

ページ範囲:P.959 - P.966

 【抄録】 非痴呆者の大脳皮質に出現するアミロイドβタンパク沈着(AmD)についての基礎的データを得,その意義を知るために,40歳代から80歳代までの非痴呆剖検例125例と,対照として軽度アルツハイマー型老年痴呆(SDAT)5例について,AmDの出現の有無と程度を,海馬を通るメセナミン銀染色半球切片で第3側頭回,島回,帯状回について検討した。程度はabsent〜severeの5段階で評価した。その結果,AmDは出現頻度,程度ともに老齢化に伴い増加するが,増加率は80歳代で最も高かった。すでに40歳代で少数ながらAmDを示す例がある一方で,80歳代に至ってもなお43.4%が陰性で,80歳代での陽性例のうちsevere例は21.7%であった。なお,severe例でのAmDの程度は軽度SDAT例に匹敵していた。これは,高齢に至ってもAmDを来さない一群があることと,痴呆に至るのはsevere AmD例のうちの一部であることを示している。AmDの形態は老人斑の各亜型に対応しており,AmDが軽度の段階ではびまん性老人斑のみで構成されることが多いが,高度になるにつれて定型老人斑と原始老人斑を伴う例が増加し,軽度SDATでの構成に近づく。

うつ病の経過に伴う身体症状の変化

著者: 田所千代子 ,   宮岡等 ,   上島国利

ページ範囲:P.967 - P.973

 【抄録】 DSM-Ⅲ-Rで大うつ病ないしは双極性障害うつ病性と診断された精神科入院患者106例につき,退院時におけるハミルトンの抑うつ評価尺度から,身体症状・愁訴項目として身体的不安,消化器系の身体症状,一般的な身体症状,心気症,体重減少を抽出した。そして,それらの得点が0点である群(A群)と1点以上の群(B群)とに大別し,身体症状の経時的変化などを比較検討して以下の結果を得た。1)うつ病相の身体症状は消化器症状をもって発現することが多いが,循環器症状が残存しやすい。2)B群ではA群に比し身体症状発現から精神症状発現までの期間が長く,より多くの身体科を受診していた。また性差では女性が,診断では大うつ病がB群に有意に多く年齢もB群がより高齢であった。3)A群では精神症状の改善に伴い身体症状は速やかに消退したが,B群では入院時より身体症状が前景を占め,精神症状の改善した時点でもかなりの身体症状が残存していた。

双極性感情障害を呈した脊髄小脳変性症の1例

著者: 清水栄司 ,   児玉和宏 ,   山内直人 ,   小松尚也 ,   佐藤甫夫 ,   井上敞 ,   小島重幸 ,   平山惠造

ページ範囲:P.975 - P.981

 【抄録】 双極性感情障害を呈した非遺伝性脊髄小脳変性症(皮質性小脳萎縮症)の1例を報告した。症例は28歳時に歩行障害,構音障害などの進行性の小脳性運動失調で発症し,数年後に躁状態を呈し,その後も周期的に躁うつ状態を示した50歳男性である。躁うつ状態はレボメプロマジン75mg/日と炭酸リチウム600mg/日の維持投与によって病相出現が抑えられた。小脳症状は発症数年後から進行が停止し,現在,階段下降時に手すりを必要とする以外に日常生活の介助は必要とせず,重症度Ⅱ度にとどまっている。周期的な躁うつ状態を繰り返した脊髄小脳変性症の例は他に報告がなく,貴重な症例である。本症例の躁うつ状態が脊髄小脳変性症に伴う器質性精神障害の発現かあるいは偶発的な双極性感情障害の合併かを考察し,さらに,小脳症状の進行の停止が感情障害の発症や炭酸リチウムなどの気分安定薬の長期維持投与となんらかの関連性を有する可能性について考察した。

憑依現象を呈したFolie à troisの2例

著者: 三田俊夫 ,   酒井明夫 ,   上田均 ,   藤村剛男 ,   中村正彦 ,   伊藤欣司 ,   坂本文明

ページ範囲:P.983 - P.989

 【抄録】 憑依症状群(キツネ憑き)を中心とするfolie à troisの2例を報告した。発端者はいずれも精神分裂病であり,「家」のうちでは中心的役割を果たし,共同体の文化的脈絡にそって生活していくべき立場にあった。1例は山村,他例は漁村が舞台となっているが,いずれにおいても発端者と継発者とは,地域の民間信仰と俗信を絆として互いの緊密な結びつきを保ち,それを土台に互いの病像を支持し合い,強め合うという傾向が顕著に認められた。従来,本病態の発生には,外部とは隔絶された,長期にわたる同居の期間が必要とされてきたが,本例では,地域と家庭双方における民間信仰の共有が,いわば心性という次元で同居と同様の状況を作り出していると考えられる。これらのことより,本病態の発生因として,従来重要視されてきた遺伝的近接と環境的近接に加えて,地域の伝統風俗や習慣に土台を持つ,信仰,思想上の近接が重要な役割を果たしうることが示唆された。

ニコチンの精神生理学的研究—24時間禁煙後の脳波に及ぼすニコチンの影響

著者: 西本雅彦 ,   宮里勝政 ,   大橋裕 ,   清水健次 ,   神谷純 ,   熊谷浩司 ,   齋藤巨 ,   大原浩市 ,   大原健士郎

ページ範囲:P.991 - P.997

 【抄録】 10名の習慣的喫煙者で,24時間禁煙後の再喫煙(ニコチン)の影響を脳波周波数解析を用いて,検討した。通常喫煙時(禁煙前)と24時間禁煙後の脳波周波数分布を比較すると,禁煙によりβ波とα2波などの速波は減少し,α1波や徐波(θ波)が増加する傾向を認めた。24時間禁煙後の再喫煙により10名中9名で,脳波上α1波の減少とβ波の増加が認められ,自覚状態も改善された。同時に覚醒度を変化させる他の要因(ホワイトノイズ)を負荷した結果,喫煙による周波数の変動と一致していた。このことより,喫煙による変動は覚醒度の変動と考えられ,ニコチンによる覚醒水準の上昇が,自覚的に快状態をもたらすことが示唆された。一方,1名で自覚的に不快な状態となった。これはニコチンの二相性の効果のうち,中枢抑制効果が顕著に現れた結果と考えられた。さらに1週間後に10名中9名で再現性が確認された。以上のことはニコチンの精神依存性を形成する重要な因子の一つと考えられた。

短報

びまん性レビー小体病の2剖検例—臨床症状およびMRI所見の検討

著者: 近藤直樹 ,   大原浩市 ,   石垣達也 ,   大原健士郎 ,   山本孝之 ,   浅野康彦 ,   小阪憲司

ページ範囲:P.999 - P.1002

 びまん性レビー小体病(diffuse Lewy body disease,以下DLBDと略す)は,1976年以降の小阪ら6,7)の一連の報告以来,まず日本で,そして1985年以後は欧米で注目され,最近は1疾患単位として認められるようになった。DLBDは小阪8)により通常型common formと純粋型pure formに分けられるが,通常型DLBDは,臨床的には中年以降に発症し,進行性痴呆とパーキンソン症状を主症状とする。病理学的には,中枢神経系における広範・多数のレビー小体の出現と大脳皮質に種々の程度の老人性変化を伴うことが特徴である。その臨床診断はアルツハイマー型痴呆,パーキンソン病が多く,多発梗塞性痴呆と診断された例は我が国にはない8)。今回我々が経験した2例は,臨床症状および画像診断よりパーキンソン病と多発梗塞性痴呆の合併と臨床診断されており,臨床病理学的に示唆に富んだ症例と考えられるので,若干の文献的考察を加えて報告する。

抗てんかん薬ゾニサミドと炭酸リチウムの併用が効果を示したrapid cyclerの1例

著者: 中村純

ページ範囲:P.1003 - P.1005

 最近のうつ病の経過の特徴としてうつ病の遷延化が挙げられる。その原因のひとつにrapidcycler出現の問題がある。Dunnerら5)は,1年間に4回以上の躁またはうつ病相を持つ双極性障害患者をrapid cycling affective disorder(RCAD)と定義し,そのような患者をrapid cyclerと呼んだ。
 今回,基礎実験においても臨床効果についてもカルバマゼピンと同様の作用があるとされる新しい抗てんかん薬ゾニサミド7,11,3)と炭酸リチウムを併用し,効果を示したrapid cyclerの1例を経験したので報告する。なお,本症例の躁状態とうつ状態,それぞれの病相での甲状腺機能,直腸温および睡眠ポリグラフィーの変化についてはすでに発表14)しており,今回は治療について報告する。

CTおよびMRI検査後結実・増悪した空間恐怖の1例

著者: 三田達雄 ,   中井隆 ,   村上直也 ,   北村登 ,   小川恵

ページ範囲:P.1006 - P.1008

 MRI検査に伴い被検者はしばしば一過性の不安や恐怖に見舞われる3〜5,11,12)。時には不安や恐怖は恐慌にまで至り,検査を中断せざるをえない場合もある3,5,8,9)。また,検査後に閉所恐怖7)や空間恐怖10)が生じ,長期間持続したとの報告もある。このようにMRI検査の心理的侵襲性が最近注目されているが,被検者をMRI検査と類似の状況におくCT検査の心理的侵襲性については報告がない。ここで提示するのはCTおよびMRI検査が空間恐怖の結実ないし増悪の契機となったと考えられた症例である。この症例の一部はすでに紹介している3)が,本稿では両検査の空間恐怖の結実・増悪の過程への関与を詳しく報告する。また,両検査における空間恐怖的状況を比較したい。

精神分裂病様症状を呈した左側頭部クモ膜嚢腫の1例

著者: 斉藤浩 ,   横田則夫 ,   林輝男 ,   本橋伸高 ,   山脇成人

ページ範囲:P.1009 - P.1011

 左側頭部クモ膜嚢腫を有する21歳の女性に,精神症状が生じた症例を経験した。精神症状としては,幻聴,被害関係妄想などの分裂病様の症状を示した。クモ膜嚢腫の部位,治療経過を検討し,従来,無症状と考えられていたクモ膜嚢腫も精神症状に影響を与える可能性を示した。

Clonazepamの短期間併用投与によってコントロールされた難治性側頭葉てんかんの1症例

著者: 中島茂雄 ,   四宮雅博 ,   四宮滋子 ,   井上令一

ページ範囲:P.1013 - P.1015

 側頭葉てんかんは経過が一般に複雑であり,しばしば治療抵抗性である。特に二次性全般発作を伴うものは症状が重篤であるとともに抗てんかん薬に対する反応性は部分発作にとどまるものよりも乏しく,難治であるといわれている。我々は全般発作を伴う難治性側頭葉てんかん例において,抗てんかん薬の定期服薬に加えて,部分発作出現時のみ臨時にclonazepamを併用し状態を見ながら3〜4日以内に中止する方法を繰り返すことによって,発作がコントロールされた症例を経験したのでここに報告する。

動き

「第7回日本精神保健会議」印象記

著者: 五味渕隆志 ,   五味渕久美子

ページ範囲:P.1016 - P.1017

 1993年3月6日有楽町朝日ホールにおいて,「子供のストレス・家庭・社会—不登校をめぐって」というテーマで,財団法人日本精神衛生会主宰の第7回日本精神保健会議が開催された。開始時間の午前10時には,すでに会場は満員の状態で,立ち見の参加者も多かった。会場には,医療,福祉,教育関係者に限らず,子供連れの母親・父親も見られ,今回のテーマが,いかに広く関心を持たれているか,あらためて知らされた次第である。

「精神医学」への手紙

Letter—lithium投与中に掌蹠角化症を生じた1例

著者: 寺尾岳 ,   吉村玲児 ,   江頭和道 ,   白土俊明 ,   林剛司

ページ範囲:P.1020 - P.1020

 症例は41歳の男性。amitriptyline 75mg/日とflunitrazepam 4mg/日の就寝前一括投与で,抑うつ状態はほぼ寛解していた。1993年1月下旬,不眠が増強したため催眠効果を期待してamitriptylineを75mgから100mg/日に増量したところ,まもなく軽躁状態を生じた。そこで,2月5日にamitriptylineを中止し,lithiumを600mg/日から開始した。その結果,速やかに鎮静されたため,2月10日より再びamitriptyline 50mg/日を開始するとともに,lithiumは800mg/日に増量した。
 この頃から,手指の角化が過剰となり白く乾燥した。患者は書類のページをめくりにくくなったと訴えた。踵も過角化を生じ,亀裂を生じた。気分的には安定していたため,3月12日にlithiumを400mg/日に減量した。他の向精神薬は変更していない。同月26日には指先や踵は白く乾燥していたが,踵の亀裂はわずかとなった。同日より1週間はlithiumを200mg/日に減量し,その後中止としたところ,4月9日には踵の亀裂は消失し手指の白い乾燥も軽快していた。さらに4月23日には,角化そのものが軽快し手足ともに滑らかとなり,患者は書類のページがめくりやすくなったと語った。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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