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巻頭言
ヤラセの効用
著者: 西丸四方1
所属機関: 1信州大学
ページ範囲:P.914 - P.915
文献購入ページに移動ところが1960年のオランダのファンデンベルフの小さな精神医学入門には80も挿絵があってクレペリンのこの写真も転載しているが,「この写真の病人には全部が全部カタレプシーや蝋屈があるのか疑わしい」としてある。すなわちヤラセであって,こんな症状のない病人ないし健康人が医者から命ぜられてサセラレタ,芝居をサセラレタところの写真ではないかというのである。クレペリンのような大先生でもヤラセをしないと教育に役立っ典型的な姿態の写真はとれないものかと感心した。私も昔は安物のコダックのヴェス単(ヴェストポケット単玉F11)かガラス乾板用の写真機でストロボなどなく,マグネシウムの粉を燃やす危なっかしい閃光器か,煌々と電球で照らせる室内か,日当たりのよい屋外でしか撮影できなかったが,こんなお膳立をした場所へ病人を連れてくると,特異な表情,姿態が消えてしまうのである。病人も写真をとられるとなると身構えをしてしまうから,何の気なしに隠し撮りをしなければだめなのである。
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