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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻9号

1993年09月発行

文献概要

研究と報告

双極性感情障害を呈した脊髄小脳変性症の1例

著者: 清水栄司1 児玉和宏1 山内直人1 小松尚也1 佐藤甫夫1 井上敞2 小島重幸3 平山惠造3

所属機関: 1千葉大学医学部精神科神経科 2船橋北病院 3千葉大学医学部神経内科

ページ範囲:P.975 - P.981

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 【抄録】 双極性感情障害を呈した非遺伝性脊髄小脳変性症(皮質性小脳萎縮症)の1例を報告した。症例は28歳時に歩行障害,構音障害などの進行性の小脳性運動失調で発症し,数年後に躁状態を呈し,その後も周期的に躁うつ状態を示した50歳男性である。躁うつ状態はレボメプロマジン75mg/日と炭酸リチウム600mg/日の維持投与によって病相出現が抑えられた。小脳症状は発症数年後から進行が停止し,現在,階段下降時に手すりを必要とする以外に日常生活の介助は必要とせず,重症度Ⅱ度にとどまっている。周期的な躁うつ状態を繰り返した脊髄小脳変性症の例は他に報告がなく,貴重な症例である。本症例の躁うつ状態が脊髄小脳変性症に伴う器質性精神障害の発現かあるいは偶発的な双極性感情障害の合併かを考察し,さらに,小脳症状の進行の停止が感情障害の発症や炭酸リチウムなどの気分安定薬の長期維持投与となんらかの関連性を有する可能性について考察した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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