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文献詳細

雑誌文献

精神医学35巻9号

1993年09月発行

研究と報告

憑依現象を呈したFolie à troisの2例

著者: 三田俊夫1 酒井明夫1 上田均1 藤村剛男1 中村正彦1 伊藤欣司1 坂本文明1

所属機関: 1岩手医科大学神経精神科

ページ範囲:P.983 - P.989

文献概要

 【抄録】 憑依症状群(キツネ憑き)を中心とするfolie à troisの2例を報告した。発端者はいずれも精神分裂病であり,「家」のうちでは中心的役割を果たし,共同体の文化的脈絡にそって生活していくべき立場にあった。1例は山村,他例は漁村が舞台となっているが,いずれにおいても発端者と継発者とは,地域の民間信仰と俗信を絆として互いの緊密な結びつきを保ち,それを土台に互いの病像を支持し合い,強め合うという傾向が顕著に認められた。従来,本病態の発生には,外部とは隔絶された,長期にわたる同居の期間が必要とされてきたが,本例では,地域と家庭双方における民間信仰の共有が,いわば心性という次元で同居と同様の状況を作り出していると考えられる。これらのことより,本病態の発生因として,従来重要視されてきた遺伝的近接と環境的近接に加えて,地域の伝統風俗や習慣に土台を持つ,信仰,思想上の近接が重要な役割を果たしうることが示唆された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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