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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻1号

1994年01月発行

特集 精神科治療の奏効機序

[感情障害の治療]

三環系抗うつ薬,その他

著者: 小山司1 石金朋人1

所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.17 - P.21

文献概要

■はじめに
 抗うつ薬の奏効機序として,モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬の抗うつ作用,三環系抗うつ薬のモノアミン再取り込み阻害能,さらに四環系抗うつ薬のアドレナリンα2受容体遮断能が見いだされたことから,臨床的に有効な抗うつ薬が共通してシナプス間隙におけるモノアミン利用度を増強するという,薬理学的知見が重視されてきたことは周知のとおりである。一方,1970年代の後半に入って,モノアミン再取り込み阻害能やMAO阻害能を有しないiprindoleなどの非定型抗うつ薬の出現により,従来の抗うつ薬の奏効機序に関する学説に再検討が迫られ,受容体研究の進展と相まって,抗うつ薬反復投与後にみられる脳内モノアミン受容体の機能変化が重要視されるようになった。
 抗うつ薬の反復投与によって生じる受容体変化として,現在までにアドレナリンβ受容体数の減少(downregulation),β受容体に共役しているノルアドレナリン(NA)感受性アデニル酸シクラーゼ(AC)活性の低下(desensitization),セロトニン(5-HT)5-HT2受容体およびドーパミン(DA)D1受容体のdownregulation,の4つの所見が知られている。これらの変化のうち,β受容体のdownregulationあるいはdesensitizationは,ほとんどすべての三環系抗うつ薬,四環系抗うつ薬のmianserinとmaprotiline,MAO阻害薬のみならず,上述したiprindoleの反復投与によってもほぼ共通して認められ,さらに臨床的な抗うつ効果発現の時間的経過に一致することから,最近まで抗うつ薬の奏効機序を解明するうえで最も重要な知見と考えられてきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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