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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

人物に特異的な既視感を訴えた脳炎性健忘症

著者: 山下光12 吉田高志1 米田行宏13 森悦朗12 山鳥重12

所属機関: 1兵庫県立姫路循環器病センター 2現,兵庫県立高齢者脳機能研究センター 3神戸大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.89 - P.95

 【抄録】 単純ヘルペス脳炎と思われる急性脳炎によって健忘症状群を呈した症例(41歳女性)を報告した。感冒様症状の後,精神症状が出現,前院に入院した。本院転院時には顕著な前向性記憶障害を呈していたが,他の知的機能は正常であった。逆向性記憶障害,作話は認められなかったが,人物に特異的な既視感を訴えた。健忘症状は急速に改善し,本院入院4週間後に退院した。20カ月後の調査では日常での忘れやすさがやや残っていたが,十分に主婦業をこなしていた。入院時のMRI(T2)では両側海馬および周辺領域に高信号域が認められた。20カ月後(T1)には両側海馬に限局した萎縮が確認された。記憶障害の強さとその回復を考える上では,海馬の損傷と,その周辺領域の損傷の程度という2つの要因が重要であることを本症例は示唆している。人物に特異的な既視感については,顔刺激の情報処理過程の特異性が関与している可能性を考えた。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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