短報
カルバマゼピンとハロペリドールの体内薬物動態における相互作用
著者:
岩橋和彦1
折野耕造2
洲脇寛1
中村和彦1
星越活彦1
細川清3
所属機関:
1香川医科大学医学部精神科
2折野病院
3香川医科大学病院
ページ範囲:P.103 - P.105
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抗てんかん薬(AED)のカルバマゼピン(CBZ)は三環構造を持った薬物で,てんかん患者のみならず双極性障害(躁状態)や精神分裂病(興奮状態)の患者にも使用されている2,4)。現在までこのCBZの投与量と血中濃度あるいは臨床効果との関連に論及した研究は少なくなく,他のAEDや類似構造を持った抗精神病薬,抗うつ薬,あるいは抗生物質との薬物間相互作用についてもいくつかの報告が出ている2,4〜6)。それらの報告によると,CBZによる肝臓の薬物代謝酵素の誘導にてCBZと併用したハロペリドール(HP)やイミプラミンなどの代謝が促進され,それらの血中濃度が低下し薬理作用が減弱するという。またCBZ単剤使用でも血清内濃度/投与量の比は投与開始してしばらくは上昇するがその後低下していくことも知られており,これもCBZの薬物代謝酵素の自己誘導により生ずる現象と考えられている1)。しかしながら,これらの報告では,どのような機序で薬物間の相互作用が起きるのかについては詳しく言及されておらず,さらにCBZ自身が併用した薬物の影響を受けるのかどうかについては,あまり調べられていない。そこで我々はHPとCBZを併用している患者とHPを併用していないCBZ服用患者を対象として血中HPおよびCBZ濃度を測定し血中濃度における両薬物間の相互作用を調べ,それについて酵素化学的に考察したので以下報告する。