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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻10号

1994年10月発行

文献概要

展望

アルツハイマー病—アミロイド沈着機序の解明に向けた家族性アルツハイマー病遺伝子との関連

著者: 田平武1

所属機関: 1国立精神・神経センター神経研究所

ページ範囲:P.1014 - P.1022

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■はじめに
 アルツハイマー病(AD)は初老期老年期に発症する痴呆を主徴とする疾患で,その発症機序にあっては脳の老人斑形成とりわけアミロイドの沈着が最も重要である。AD脳の老人斑や脳血管に沈着するアミロイドはβタンパク(Aβ)が不溶化し,線維状となったものである。Aβはアミロイド前駆体タンパク(APP)に由来し,APPの膜貫通部分を含むアミノ酸約40〜42(43)個のタンパクがAβとして切り出され,アミロイドとして沈着すると考えられている。Aβの沈着機序がわかれば,それをもとにADの発症を予防ないし治療する方法が生まれると考えられるので,その研究は世界中で精力的に進められている。
 一方,ADには遺伝因子の関与があることは確実であり,特に家族性アルツハイマー病(FAD)の存在は最も重要な根拠となっている。FADの遺伝子が解明されれば,ADの発症機序とりわけAβの沈着機序に迫りうると考えられるので,やはりこれも世界で最も重要な研究課題の1つになっている。最近,いくつかのFAD遺伝子が明らかになり,また未知の遺伝子解明にも近づきつつあり,Aβの沈着機序の解明が加速されつつある。ここでは,これまで明らかになったFAD遺伝子とAβ沈着機序との関連を述べ,さらに今後明らかにされようとしている新しい遺伝子について触れ,AD発症機序解明の展望を述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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