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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻10号

1994年10月発行

研究と報告

リチウムの抗攻撃性作用—気分障害を伴わない精神遅滞者を対象としたリチウム中断による検討

著者: 寺尾岳123 大賀哲夫1 古川正1 野崎伸次1 太田有光1 大坪由貴1 座間味宗和1 岡田正勝1

所属機関: 1日立梅ケ丘病院 2日立健康管理センタ 3産業医科大学精神医学

ページ範囲:P.1071 - P.1076

文献概要

 【抄録】 気分障害を伴わない8名の精神遅滞者および境界知能者を対象として,投与中のリチウムを中断することによりリチウムの抗攻撃性作用を検討した。リチウム中断直前1カ月間と直後1カ月間の行動を比較すると,自傷や他害が増加した者2名,落ち着きのなさや聞き分けのなさが増加した程度の者2名と,8名中4名にリチウムの効果が認められた。また,リチウム中断後に2名の下痢が軽快した。リチウム中断前後の血液検査においては,free T4あるいはT4が8名全体として有意に増加した。また脳波検査では,2名にα waveの増加を認めた。以上の結果から,気分障害を伴わない精神遅滞者の一部に,リチウムが重篤な副作用を伴わず抗攻撃性作用を発揮する可能性が示唆された。他方,リチウム継続投与により軽度ながら種々の副作用が生じたことから,漫然と投与することなく,適宜減量,中止による有用性の検討が必要と考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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