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雑誌目次

論文

精神医学36巻11号

1994年11月発行

雑誌目次

巻頭言

脳科学の進展と精神医学

著者: 小山司

ページ範囲:P.1124 - P.1125

 近年の脳科学の進展には目を見はるものがある。「脳の世紀」あるいは「脳の10年」などの標語にもその意図が現れているように,「脳」の構造と機能に関する研究が国際的レベルで急速に推進されつつある。筆者は,今年,2つの国際的行事に参加する機会を得て,こうした動向を鮮明に肌で感じとることができた。
 1つは,1994年4月27日,天皇皇后両陛下ご列席のもとに東京・国立劇場で挙行された日本国際賞(ジャパン・プライズ)授賞式への参加である。1994年度の受賞者は,航空宇宙分野からピカリング(アメリカ合衆国),心理学・精神医学分野からカールソン(スウェーデン王国)の両博士であった。第10回を記念する今年度の日本国際賞の受賞対象として宇宙と心理学・精神医学の両分野が選択されたことには,主催財団のそれなりの構想があったことは想像に難くない。なぜなら,「心」の現象が成立する臓器である「脳」は1つの小宇宙にたとえられるように,両分野ともいまだに神秘のベールに包まれたままの大きな謎であり,現代科学の最も重要な研究テーマだからである。受賞者のひとりであるカールソン博者は,周知のように,神経伝達物質としてのドーパミンの作用の発見と,精神・運動機能とその障害における役割の解明において多大な業績をあげた神経精神薬理学者である。なかでも精神分裂病のドーパミン仮説を基礎づけた先駆的仕事が有名であり,それだけに全く当を得た選考結果であったといえる。精神分裂病の病因の理解と治療の発展に大きく貢献した同博士の業績を心から称えるとともに,今回の日本国際賞がこれからの脳科学の発展に1つの大きな推進力となることを確信したしだいである。

展望

気分障害の神経科学—今,見えてきたもの

著者: 野村総一郎

ページ範囲:P.1126 - P.1137

 気分障害の生物学的病因をめぐっては,古くからモノアミン仮説という大きな流れがある。この仮説は古臭い考えのように思われがちだが,否定すべき明確な論拠も未だないのである。かと言って,この仮説に大きく歩み寄った所見も見い出されてはいない。いわば「塩漬け状態」になっており,生物学的病因論全体が暗礁に乗り上げているとみる向きもあるようである。しかし,一方で最近の基礎神経科学のすさまじいまでの進展は,精神医学にも確実に影響を及ぼし,新しい方法を駆使した所見が,気分障害についても次々と発表されていることにも注目せねばならない。それらを子細に見ると,個々には本質を突いているとも見える所見が集積されつつあることに気づく。本稿ではモノアミン系を中心として,最近提唱されている生物学的仮説,神経科学の新知見に基づいて,気分障害の病因に関連して今何が見えるのか,近い将来に何が見えてくるのかを展望する。ただその一方で,生物学的研究にありがちな誤謬についても強く意識し,問題点を指摘しながら論を進めたい。

研究と報告

精神障害者社会生活評価尺度の開発—信頼性の検討(第1報)

著者: 岩崎晋也 ,   宮内勝 ,   大島巌 ,   村田信夫 ,   野中猛 ,   加藤春樹 ,   上野容子 ,   藤井克徳

ページ範囲:P.1139 - P.1151

 【抄録】 精神分裂病者の社会生活能力を客観的かつ包括的に評価するために,精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)を開発した。本尺度のねらいは,3点ある。①精神障害者の社会生活上の問題把握を包括的に行うために,生活経過の不安定性や,現実離れといった,既存の評価尺度にはない経時的,心理的評価項目を含んでいること。②入院生活から社会的自立まで社会生活の多様な場面において使用できること。③尺度として簡便に使用でき,信頼性・妥当性が確保されていること。この尺度の信頼性,妥当性の検定を目的として,2回の試行調査を実施した。第1次試行調査では,特定の評価者間に情報分散が発生し,十分な信頼性,妥当性が確保できなかった。そこで,より信頼性,妥当性の高い尺度を目指し,改訂版を作成した。第2次試行調査の結果,まず信頼性の点で,十分に確保されていることが示され,当初の3つのねらいを満たした評価尺度がほぼ完成した。

抗うつ薬とせん妄

著者: 山田尚登 ,   青谷弘 ,   高橋三郎

ページ範囲:P.1153 - P.1158

 【抄録】 滋賀医科大学精神科神経科に入院し,抗うつ薬が投与されていた感情障害患者312名を対象として,抗うつ薬の重篤な副作用の1つであるせん妄について調査を行った。その結果,(1)抗うつ薬によるせん妄は10名で認められ,(2)60歳以上の高齢者においてのみ認められた。(3)抗うつ薬投与後せん妄を起こすまでの期間は4〜15日で,(4)せん妄が改善するまでに要した期間は5〜38日であった。(5)せん妄を起こした患者と起こさなかった患者で,CT所見の異常には差がみられなかった。(6)薬物によってせん妄の起こる頻度に差がみられ,投与薬物の中ではアミトリプチリンが高頻度にせん妄を引き起こしたが,(7)低用量の抗うつ薬においてもせん妄は認められた。

精神症状で初発しecholaliaを呈した進行性核上麻痺の1剖検例

著者: 織田辰郎 ,   木暮龍雄 ,   冨永格 ,   女屋光基 ,   三村將 ,   加藤雄司 ,   岩淵潔 ,   羽賀千恵

ページ範囲:P.1159 - P.1166

 【抄録】 45歳時に被害妄想で初発し,51歳時に錐体外路症状を発現,全経過8年で死亡した53歳女性の1剖検例を報告した。臨床的,病理学的所見から進行性核上麻痺(PSP)と診断したが,臨床症状は神経症状にはるか先行して精神症状で発病し,echolalia(反響言語)を認めたことなどが特徴的であった。PSPにおいてecholaliaがみられたとする報告は非常に少なく,その内容の記載,剖検報告は本例が初めてである。神経病理学的には大脳皮質,視床に変性を認め,echolaliaとの関連が考えられた。大脳皮質では各葉の第Ⅲ層の錐体細胞に広範に多数の硬化萎縮した神経細胞およびAlzheimer原線維変化(NFT)を認めた。これはPSPとAlzheimer病との疾患類似性を考える上で注目すべき所見である。電顕的にはNFTは大脳皮質にstraight tubules,海馬,青斑核にpaired helical filaments,neurofilamentsの3種類の形態が観察された。

長期の経過をたどったにもかかわらず,初期Pick病の病理所見を呈した1例

著者: 池田学 ,   池田研二 ,   遠藤美智子 ,   羽賀千恵 ,   水谷喜彦

ページ範囲:P.1167 - P.1171

 【抄録】 左側頭葉前部に著しい限局性萎縮および両側前頭葉底面と側頭葉に多数のPick嗜銀球を認めながら,Pick病特有の臨床状態である欲動的脱制止(triebhafte Hemmungslossigkeit),考え不精(Denkfaulheit),特に側頭優位型に特徴的な滞続症状や語義失語などをほとんど示さず,20年(CTで限局性脳萎縮を確認できた時点から8年以上)の経過をたどった臨床と病理ともに特異な67歳,右利き女性のPick病の1例を報告した。本例の萎縮の拡がりはほぼ左側の側頭葉前半部に限局していたため,これらの症状を呈するには不十分であったと考えられた。

インターフェロン投与によりせん妄を呈したC型慢性肝炎の3例

著者: 佐々木信幸 ,   古瀬勉 ,   幸田久平 ,   中澤修 ,   深津亮 ,   高畑直彦

ページ範囲:P.1173 - P.1179

 【抄録】 C型慢性肝炎へのインターフェロン(IFN)α投与によりせん妄を呈した3例を報告した。C型肝炎のIFN療法による精神症状の特徴について検討を加え,悪性腫瘍の際みられる精神症状との比較をもとに,その発現機序について考察した。
 IFN投与に伴う意識障害の特徴は,悪性腫瘍群では精神運動抑制を中心とした意識混濁であり,慢性肝炎群では精神運動興奮を伴う意識変容である。高用量投与を行う悪性腫瘍群と,低用量投与を行う慢性肝炎群の際にみられる精神症状には多くの相違点があり,両群の精神症状の発現機序が異なる可能性が示唆された。

女子高校生のやせ願望と食行動の分析(2)—秋田市・能代市の女子高校生の比較

著者: 志賀令明 ,   福島峰子 ,   遠藤安行

ページ範囲:P.1181 - P.1188

 【抄録】 筆者らは,秋田市・能代市の計3つの高等学校の女子生徒計694名を対象にして,食・対人行動に関する質問紙調査を実施した。それらに関して因子分析法を用いて解析を加え,さらに対象を肥満度と(現実の体重-理想体重)/BMI,の度合に応じて9つのサブグループに分類し,それぞれの「やせ願望」について段階回帰分析を用いて検討を加えた。その結果,まず双方全体では「肥満嫌悪」,「評価希求」の2つの因子が共通する説明変数として回帰した。次いで肥満度・やせ願望とも中程度の群間で比較すると,特に秋田市内からの通学者が多い秋田T高では,周囲の同年齢集団で規範となっているボディイメージに同調しようとする傾向がみられ,他方,周辺郡部からの通学者が多い能代市内の2つの高校では,家族からの出立志向が大きく影響を与えていることが知られた。若年層が「やせ」を望む地域差とその理由について考察した。

ドイツ精神医学草創期の診断概念—精神科診断学の発展に関する経験的調査

著者: ,   岩井一正

ページ範囲:P.1189 - P.1196

 【抄録】 1852年に創立されたRegensburg地域病院の入院台帳に基づいて,ドイツ精神医学の草創期(1852〜1914)の診断カテゴリーを経験的に調査した。その第1世代の診断は,純記述的な症候群概念から成り立っている。それらは,それぞれの主導症状の前科学的一民族的な伝統的呼称に即したものである。統計的に評価すると,これらの症候群カテゴリーは予後的な妥当性に優れており,各々の経過型はGriesingerの段階学説に一致を示した。続く第2,第3の診断期には,身体に基礎づけられる障害が次第に取り出された。診断学は,症候群学から疾病学へと移行したのである。大学精神医学の影響が強まるにつれて,身体に基礎づけられない障害の様々な形態は,ついには,「単純性精神障害」という輪郭を欠いた残遺カテゴリーにまとめられ,これが全入院の75%を占めるに至った。このことは,精神医学のパラディグマが精神病理学から神経病理学に変わり,心理学に指針を置いた観察法が押し退けられたことを示している。心の喪失は,その後のドイツ精神医学に重大な帰結をもたらした。

感情障害エピソード反復の周期性と季節性

著者: 押谷葉子 ,   山田尚登 ,   高橋三郎

ページ範囲:P.1197 - P.1202

 【抄録】 DSM-Ⅲ-R診断基準で双極性障害(うつ病性および躁病性),大うつ病(単一エピソードおよび反復性)を満たした患者のうち急速交代型の双極性障害を除く87名の患者で,躁病エピソードとうつ病エピソード発症の周期性と季節性を検討した。
 うつ病エピソードは春に,躁病エピソードは夏に最も多くみられた。また,大うつ病単一エピソードでは秋に第2のピークを示した。しかし,いずれも季節性に統計学的な有意の差はなかった。周期性に関しては,双極性障害では隣接するエピソードの間隔には明らかな周期性を認めなかったが,躁病エピソードが12カ月後の再発,また大うつ病反復性においても12,24カ月前後の再発が多く認められ,これらの感情障害が1年および2年後の同じ季節に再発する傾向が認められた。またこの傾向は躁病エピソードについては統計学的に有意であった。これらのことから発症の季節性または周期性について,感情障害の下位分類に差が認められ,しかも,大うつ病反復性のうつ病エピソードと双極性障害の躁病エピソードに12カ月を基本周期とする周期性が存在していることが示唆された。

短報

覚醒剤と有機溶剤の交代乱用の1例における精神病症状の比較

著者: 浅見隆康 ,   宮本正典 ,   町山幸輝

ページ範囲:P.1203 - P.1205

 覚醒剤精神病の成立過程においては,過去の有機溶剤乱用が少なからず影響を及ぼす可能性が示唆されている。小沼2)は,有機溶剤乱用歴を有する場合には,数回の覚醒剤の使用により精神病症状が出現する可能性があるという。また有機溶剤と覚醒剤を両者同時に使用した場合は,想像以上に激しい精神症状が出現する場合があるとも報告されている7)。したがって,覚醒剤精神病に及ぼす有機溶剤の影響は十分に考慮する必要があると思われる。今回,我々は,有機溶剤乱用の5年後に覚醒剤乱用を開始して早期に精神病を呈し,さらにその2年後に有機溶剤再乱用により精神病の再燃をみた症例を経験した。本症例の場合,覚醒剤乱用時における精神病症状と有機溶剤乱用時のそれとでは,少なからず相違がみられ,覚醒剤精神障害の成立過程における,覚醒剤と有機溶剤の相互作用を検討する上で,貴重な症例と思われたので若干の考察を加え報告する。

ステロイド剤長期服用中に発症し,PCR法で診断されたサイトメガロウイルス脳炎の1治験例

著者: 岡村仁 ,   佐々木高伸 ,   前正秀宣 ,   佐藤由樹 ,   菊本修 ,   中村靖 ,   好永順二 ,   引地明義 ,   中山隆安

ページ範囲:P.1207 - P.1209

■はじめに
 サイトメガロウイルス(CMV)脳炎が癌,白血病,臓器移植のような高度の免疫抑制状態以外で発症するのは極めてまれである。しかも臨床像,画像所見,髄液所見などで診断の決め手となるような特徴的な所見を示さないため,これまでは診断が非常に困難であった。今回筆者らは,ステロイド剤の長期服用中に発症,PCR(polymerase chain reaction)法1)によって髄液中のCMVが陽性を呈し,ganciclovir(Denosine®)による治療が有効であったCMV脳炎の1例を経験したので報告する。

インターフェロン療法中に精神症状を呈したC型慢性活動性肝炎の4例

著者: 佐藤雄 ,   高橋克朗 ,   太田保之 ,   伊東勉 ,   松村暢之 ,   古賀満明 ,   矢野右人

ページ範囲:P.1211 - P.1213

 インターフェロン(IFN)は,C型慢性活動性肝炎に対して健康保険適用となり,その投与症例は急増している。しかし,その副作用として初期インフルエンザ様症状のほかに,白血球減少,蛋白尿,脱毛,自己免疫疾患の悪化などが知られ4),多彩な精神神経症状を呈することも報告されている4,6,12,14)
 国立長崎中央病院肝疾患センターでIFN療法を受けたC型慢性活動性肝炎305例のうち,4例に著しい精神症状を認めたので報告する。

資料

地域の総合病院におけるコンサルテーション・リエゾン精神医学の必要性—八戸赤十字病院における5年間の精神科紹介例に基づく考察

著者: 坂本文明 ,   伊藤欣司 ,   中村正彦 ,   酒井明夫 ,   三田俊夫 ,   金森一郎

ページ範囲:P.1215 - P.1219

■はじめに
 八戸赤十字病院は全病床数505床で,年間平均で約70例の他科から精神科への紹介患者がある。精神科では,その治療や経過観察として,1日平均5〜6人の他科入院中の患者を診療しており,一般診療科との協力による精神医療はかなりの割合を占めている。我々は以下に,八戸赤十字病院における他科からの精神科依頼の内容と問題点を検討し,それに基づいて,コンサルテーション・リエゾン精神医学(以下CL精神医学と略す)の必要性を明らかにしたい。

動き

「第1回アジア睡眠学会・第19回日本睡眠学会合同会議」印象記

著者: 太田龍朗

ページ範囲:P.1220 - P.1221

 第1回アジア睡眠学会・第19回日本睡眠学会合同会議は,1994年6月15,16両日東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)で開催された。アジア睡眠学会は国立精神・神経センター名誉総長の大熊輝雄氏が会長を務められ,日本睡眠学会は世話人として大熊氏と国立精神・神経センター武蔵病院長高橋清久氏,同精神保健研究所部長の大川匡子氏が運営に当たられ,合同会議全体の事務局長を高橋清久氏が担当された。本会議はFounding Congress of the Asian Sleep Research Society in Association with 19th Annual Meeting of the Japanese Society of Sleep Researchと名づけられているように,アジア睡眠学会の設立大会を,日本睡眠学会の年次学術集会に合わせて開催したものである。
 我が国の睡眠研究がアメリカ,ヨーロッパと並んで活発に行われていることは,内外に認められているところであるが,近年,他のアジア諸国の中でも睡眠への関心が高まってきており,中国,韓国,インド,香港には睡眠学会がすでに設立されている。こうした状況を反映して,1991年の第16回日本睡眠学会で,世話人の東京医科歯科大学井上昌次郎教授らにより,「アジア睡眠学会設立を考える」という円卓会議が我が国をはじめ中国,韓国,インド,シンガポール,香港の6カ国が参加して開かれた。これを受けて日本睡眠学会内に国際交流関連小委員会(融道男委員長)が設けられ,アジア睡眠学会設立に向けて拍車がかかった。翌1992年9月,インドのニューデリーで開かれた「睡眠・覚醒に関する国際カンファレンス」(会長V.M.Kumar教授)において,10カ国から成るアジア睡眠学会設立準備委員会が開かれて本学会の正式な設立が決定され,その創立大会,つまり第1回アジア睡眠学会を1994年東京で,日本睡眠学会定期学術集会と合同で開催することが決定されたのである。

「第1回日本産業精神保健学会」印象記

著者: 島悟

ページ範囲:P.1222 - P.1223

 1994年6月18日,第1回の日本産業精神保健学会が,慶應義塾大学精神神経科学教室教授浅井昌弘大会長のもとに,慶應義塾大学医学部で開催された。本学会は1993年11月15日の発起人会で設立されたものであり,その趣意書に謳われているように,精神科医,心療内科医,産業医,産業看護職,心理職,ケースワーカー,衛生管理者など多職種からなる企業内外のメンタルヘルス担当者間の有機的連携を図ることを,その目的の1つとした学際的な学会であることが特徴的である。
 当日は,梅雨の中休みの晴天で蒸し暑かったが,288名の参加者を数えた。大会長の開会の辞に引き続いて,午前中,2会場に分かれて一般演題30題が口演されたが,いずれの会場においても活発な討論がなされ熱気にあふれていた。比較的精神科医の発表が多かったが,多職種のスタッフが共同演者に名を連ねており,また衛生・公衆衛生の専門家や看護職の発表も行われた。一般演題をテーマによって分類すると,うつ病を中心とする気分障害が8題,精神健康に関するものが8題,神経症・心身症が7題,アルコール関連問題が4題,精神障害全般が3題であった。

「精神医学」への手紙

Letter—Promethazineにより夜間の背部痛を生じた精神分裂病の1例—寺尾論文を読んで

著者: 今泉寿明

ページ範囲:P.1226 - P.1226

 levomepromazine(LP),promethazine(PMZ)などの抗ヒスタミン作用を有する向精神薬(抗H1精神薬)の関与が推定されている夜間痛2,3)について,その分類と成因を論ずる。
 自験例は精神分裂病の男性。29歳で発病,31歳になりhaloperidol(HP)10mg/日(毎食後),LP 50mg/日(就寝前)の治療を開始。経過良好にて5週目にはHP 3mg/日,PMZ 25mg/日(就寝前)に減量した。すると6週目頃から,寝床と接する下背部(体位によっては前胸部,肩・上腕)に夜間鈍痛を訴え始め,起床後の活動ですぐ軽快し就寝までは無症状であると述べた。他の異常知覚は認めず,身体疾患も否定された。13週目のPMZ中断により痛みは徐々に和らぎ,15週目には消失,35週目の現在まで再発をみていない。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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