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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻11号

1994年11月発行

研究と報告

ドイツ精神医学草創期の診断概念—精神科診断学の発展に関する経験的調査

著者: 岩井一正2

所属機関: 1 2東京女子医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.1189 - P.1196

文献概要

 【抄録】 1852年に創立されたRegensburg地域病院の入院台帳に基づいて,ドイツ精神医学の草創期(1852〜1914)の診断カテゴリーを経験的に調査した。その第1世代の診断は,純記述的な症候群概念から成り立っている。それらは,それぞれの主導症状の前科学的一民族的な伝統的呼称に即したものである。統計的に評価すると,これらの症候群カテゴリーは予後的な妥当性に優れており,各々の経過型はGriesingerの段階学説に一致を示した。続く第2,第3の診断期には,身体に基礎づけられる障害が次第に取り出された。診断学は,症候群学から疾病学へと移行したのである。大学精神医学の影響が強まるにつれて,身体に基礎づけられない障害の様々な形態は,ついには,「単純性精神障害」という輪郭を欠いた残遺カテゴリーにまとめられ,これが全入院の75%を占めるに至った。このことは,精神医学のパラディグマが精神病理学から神経病理学に変わり,心理学に指針を置いた観察法が押し退けられたことを示している。心の喪失は,その後のドイツ精神医学に重大な帰結をもたらした。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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