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文献詳細

雑誌文献

精神医学36巻2号

1994年02月発行

文献概要

研究と報告

昏迷状態を前景とし,central pontine myelinolysisのMRI所見が臨床症状の改善に伴いほぼ消失したアルコール中毒の1例

著者: 村田哲人1 越野好文1 大森晶夫1 伊崎公徳1 前田正幸2 伊藤哲2

所属機関: 1福井医科大学神経精神医学教室 2福井医科大学放射線医学教室

ページ範囲:P.167 - P.172

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 【抄録】 症例は54歳の慢性のアルコール中毒の男性で,入院時には緘黙,寡動,意志の発動性の低下などの精神症状が前景に出現していた。うつ病性の昏迷を疑い治療したが改善みられず,MRIのT2およびproton密度強調画像にて橋底部中央に高信号域を認め,central pontine myelinolysis(CPM)と診断した。橋底部の異常所見は臨床症状の改善とともにほぼ消失し,T1強調画像では同部位に異常なく,ごく初期の可逆的な脱髄の過程を反映する所見と考えられた。画像上,病変は橋横走線維を含む橋底部の中央に限局し,他の各脳部位に異常はみられなかった。これらの画像所見は臨床症状に一致し,小脳失調は顕著であったが,錐体路徴候・脳神経症状などは病期を通して認められなかった。CPMの成因として,従来より栄養障害,肝障害,低Na血症とその急速補正などが注目されているが,本例にこれらの事実はなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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