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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

内縮恐怖(縮陽症,koro)の1例

著者: 劉鉄榜12 足立直人1 羅小年2

所属機関: 1国立精神・神経センター武蔵病院 2湖北医学院精神医学教研室

ページ範囲:P.173 - P.176

 【抄録】 症例は発症時46歳の中国東南沿海部出身の男性。“陰茎が内縮し死に至る”と訴え急性不安恐慌状態を呈した。性器および腹部に身体的疾患は認められず,他の精神疾患も除外され,内縮恐怖(縮陽症,koro)と考えられた。抗不安薬による急性不安状態からの脱出後,認知行動療法的接近と環境調整により症状は消失し,再発はみられなかった。
 本症の成因は必ずしも文化的重圧のみでは説明できない多重的な構造を持つものと考えられた。小心で神経質な病前性格,先行する抑うつ不安状態,陰萎など性的機能への不安,知的機能の低さなどが基盤となり,“陰茎を狙う天女”という民間伝承や“陰茎内縮により死に至る”という中国伝統医学の概念にとらわれて急性不安恐慌状態として発症するものと考えられた。またDSM-Ⅲ-RやICD-10などの既存の診断分類には本症に適する項目がなく,その位置づけについて今後の検討を要するものと考えられた。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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